北海道の原生林に生息しふくろうの中では世界で最も大きいとされるしまふくろうは、はるか昔からアイヌの人々に「神」として尊ばれてきました。しかし、明治以降の土地開発によって数が減り、今や絶滅の危機にさらされています。
この写真絵本の著者は、野生動物の生きる姿をテーマに写真を撮り続けている写真家です。まれにしか見ることのできないしまふくろうを追って森に入り、撮りためた写真をまとめて作られたのがこの本です。
しまふくろうのひなが巣立つのは初夏。からだは産毛におおわれていますが、目は鋭く、すでに「神」の風格が備わっています。
成長するにつれ、その眼光は鋭さを増し、森の中で出会ったときには「こんなところになにしにやってきた」と問われているような気持ちになったそうです。
成鳥がお互いになわばりを作っていくためには広大な森が必要ですが、今はそれが充分ではありません。
翼を大きく広げてこちらを見すえる表紙の写真を見ていると「それでもわれわれは、この地で生きていくのだ」という森の神の声が聞こえてくる気がします。
(ぶどうの木代表 中村 佳恵)
あかね書房
写真・文:前川 貴行