禅昌寺は応永三年(1396)大内義弘によって開創された曹洞宗の古刹で、往時は千人近い修行僧を擁し、西の高野と呼ばれたという。萩往還からは少し東の山手に位置する広大な境内には本堂の他に、山門、鐘楼、禅堂などが配置されている。毎年春になると新入社員の座禅研修の模様がテレビで放映されるのを御覧になった方も多いことだろう。
毛利家の諸事を網羅した記録書「もりのしげり」には、ここを「鯖山御殿」と仮称したと書かれているので、参勤交代時には宿泊や休憩場所として使用されたようだ。久坂美和も、明治三年四月十八日、元徳公夫人のお供をして三田尻経由で長府を訪れる際にここで休憩したと「女儀日記」に記されている。
文・イラスト=古谷眞之助