“過去の病気”との認識が、受診・診断の遅れにつながり、周囲の人々に広まる集団感染が現代でも起こっている結核だが、新型コロナウイルス感染症の流行によって、結核対策を取り巻く状況は変化している。まずは結核について正しく知り、予防についてこの機会に考えてみよう。
結核とは、結核菌によって主に肺に炎症が起こる病気で、初期症状は風邪に似ているが、咳や微熱といった症状が表れず、気づかないうちに進行してしまうことがある。
新型コロナウイルスも呼吸器疾患で、咳や息切れなどを伴い、発熱や全身倦怠を起こすが、結核との最大の違いは発症のスピードだ。結核は徐々に数週間以上もかけて発症していくが、新型コロナウイルスは感染後数日以内に発症する。
2019年の新登録結核患者数は、前年に比べて全国で1130人、山口県では6人減少した(表参照)。その一方で近年、かつて結核が国民病だった時代に罹患した人が、高齢化による免疫力の低下に伴い発症する例が多くみられる。実際、新登録結核患者のうち3人に1人が80歳以上だ。
さらに、新型コロナウイルス感染症流行の影響で、発見が遅れる傾向が見られる。実際、2020年の結核患者数は例年を下回っているが、これは緊急事態宣言の発出や外出自粛の要請から、健診の延期や受診控えが生じたことから患者の発見が遅れているもので、一時的な低下と推測されている。
新型コロナウイルス感染症の流行によるマスク着用、ソーシャルディスタンスといった「新しい生活様式」は結核対策にも有効だが、結核の早期発見を遅らせる恐れもある。診断が遅れると、重症化や集団感染につながる恐れもあるため、なるべく早期に発見することが重要となる。山口県における2019年度の結核健康診断受診率は、県平均が10.9%だった。美祢市の受診率は14.1%だったが、山口市は5.1%と県平均を下回っている。
厚生労働省では毎年9月24日~30日を「結核予防週間」と定め、結核に関する正しい知識の普及啓発を図っている。結核予防会では、全国各地で街頭募金や無料結核検診、健康相談等を実施して、結核予防の大切さを伝えている。結核菌を含めた様々な感染症に対する抵抗力をつけるためには、バランスのとれた食生活、十分な睡眠休養、適度な運動、ストレスをためないことが大切だ。
また、定期的(年に1回)に胸部レントゲン検査を受け、タンのからむ咳が2週間以上続いている、微熱・身体のだるさが2週間以上続いている、といった状態があてはまる場合は、下記に掲載の医療機関などを早めに受診しよう。