「まあ、君ちゃん、伯母さんに生き写し!」。君子さんは私の大好きな従姉で久しぶりに会った。でも、私は少し気味悪くて二三歩後ずさりした。君子さんは、亡くなった彼女のお母さんにそっくりになっていたのだ。彼女は「歳とって長い髪が五月蝿くなって切ろうと美容室に行ったのよ。おまかせします、と目を閉じていたらできあがったのがこれよ。母と同じショート」と言った。今まで腰までの豊かな髪をしていたのだ。従姉はお茶を一口飲んで「終わって目を開けたら、真正面の鏡になんか見覚えのある人が映っているのよ。よく見たら、母がいるじゃないの。鏡の私は仏壇の母の遺影とそっくりなのよ。母に似ている、ということは嬉しいことでも嫌なことでもない。母とは仲の良い親子ではなかったし、性格も全く似ていないのに顔は似るものなのね。親子とはそういうものなのね」と首をすくめた。
「家に帰って三面鏡でよく見たわ。私の横顔は祖母にそっくり。上目遣いに見上げると父の広い額がそこにある。首を振ると左の鏡には兄弟まで現れる。頬を膨らませたり、泣き顔を作ったりしてたら、鏡の中には沢山の私がいる。でも私はどこにもいない。変な気分よ。模造、贋作、偽物、擬態、紛い物、瓜二つ。鏡の前で腕組みして溜息よ」。従姉はおどけ顔をして私を見た。