私は夢を見ない・・・と思う。何か見ているのだろうけれど目覚めると何も覚えていない。
二年前に亡くなった節子さんの仏前に盆の供物を送った。宛先は娘さん。添え状にこう書いた。
『あれから二年、節子さんあなたは一度も私の夢に出てきてくれないのね。あの世は花が咲き、食べ物も美味しく、あなたの好きな韓流イケメンが沢山いるのでしょう。毎日気持ちは舞い上がり、なにやかやで忙しいことでしょう。が、一度ぐらいは私の夢に出て来て下さい。とにかく出て来て』。
手紙が届いたか、願いが叶って、夏の夜、節子さんは夢に現れた。
彼女は、新山口駅の地下道を歩いていた。私もそこを歩いていて、私が先に節子さんを見つけた。懐かしくって寄って行ったら、節子さんが三歩後ろに下がった。私を避けた。驚いて顔を見ると、眉間に皺を寄せて困った顔をした。彼女は、急いで地下道を上って消えて行った。節子さーん。
なんで、なんで。眉間の皺の意味がわからない。彼女は私が死んだと思ってびっくりし、ここに来るのはまだ早い、帰れ、の意味なのか。それとも、私を忘れたか!
節子さん、とりあえず出て来てくれてありがとう。今度は何かしゃべってね。そして私を抱きしめて。