学校帰りの小学生達が、大きくなったら何になりたいかバスの中でおしゃべりしていた。スポーツ選手、ユーチューバー、パティシエ、ゲームクリエイター等。私には半分はわからない。彼等は楽しそうに話しているので、魅力ある夢多き職業なのだろう。
私も何になりたいか考えてみた。もちろん、七十五歳の私には将来はない。自立するにはそれなりの修行期間がいる。生活を維持する賃金を手にするのは至難の業。もう時間切れ。それでもし、もし、死後もう一度生まれることがあるのなら、何になりたいか考えた。バスに揺られながら。
カマキリか女忍者になりたい。ギョロリとした目と大きな鎌。スマートな肢体。草取りしていると、たまに見かける大形のカマキリがいいなあ。なんといってもあの鎌がいい。カマキリにとっては、怪獣のような私に鎌を振り上げる。それがいい。市井の片隅で生きてきた私。一度も鎌を振り上げたことはない・・・。
女の忍びも憧れだ。抜群の運動能力に決断力。山河を走り、天井裏に忍び悪の正体を暴き、手裏剣を投げ、成敗し颯爽と去っていく。私は、一度も颯爽としたことはない。
子供が二人降りていく。「さようなら。未来のユーチューバー君にえーと、ゲームクリエイター君。君達の健闘を祈る」。