ゆっくりとおだやかな調子でくり返されることば、やわらかなタッチと色調の絵、丸味のある字体でゆったりと組まれた文字―この本を開くと、娘たちが小さかったころ、一緒にふとんにくるまって、「おやすみ前の一冊」として読んでいたときのことが、皮膚感覚を伴って思い出されます。
うたうこともとぶこともやめ、巣の中でよりそって眠ることり。海の底で目をあけたまま眠るさかな。毛布のようにかたまりあって眠るひつじ。また、杭につながれたほかけ舟や、ガレージの中の車など、昼間の営みを終えて静かな眠りについたさまざまなものの姿が「ねむたい〇〇たち」ということばとともに描かれ、ページをめくるごとに、読み手自身も眠りの世界へ誘いこまれていくような気がします。
最後のページの天使の絵と「かみさま~」ということばには、やや宗教的な雰囲気も漂っていますが、ぐっすり眠るものたちを静かに見守り、「ものいえぬ ちいさな ものたちを おまもりください。」と願う気持ちは、人種や宗教の別なく、自然とわいてくる感情のように思います。
(ぶどうの木代表 中村 佳恵)
福音館書店
文:マーガレット・ワイズ・ブラウン
絵:ジャン・シャロー
訳:いしい ももこ