「自分たちの手で、自分たちの住むまちを美しく飾りたい…」をコンセプトに、「まちなみアート-my made 竪小路」が、山口市の竪小路・一の坂川周辺の「大内文化ゾーン」で、11月19日(金)から23日(火・祝)まで開かれる。歴史・文化にあふれる街並みや神社・仏閣等を、生け花、アート、音楽などで彩り、地域の魅力発信やにぎわいづくりを進めようというもので、昨年のプレイベントに続いての開催。山口ゆめ回廊博覧会の事業の一つで、主催は同実行委員会(山口市文化交流課内、TEL:083-934-2717 )。
催しに先立ち、竪小路地域のブランドイメージを高めようと、ロゴマークが制作された。デザインしたのは、書家・美術家の赤岩保元さん。赤岩さんは、伝統美を現在に復活させる仮名書から、自由で枯淡な現代書まで、幅広い作風をもつ書家。版画・洋画・コラージュ・立体などの作品も製作・発表しており、国内外での個展歴は40回を超えている。展覧会以外にも、2004年の「えひめ町並博」では愛媛県内子町の「和紙と書の町並みアート」を担当。絵本や教科書の表紙、企業・商品のロゴデザイン作成等、その活動は幅広い。
完成したロゴマークは、竪小路の「竪」の字と源氏香図※ 「御幸」とを合わせている。52パターンある源氏香図の中から、竪小路周辺の大路小路の町筋をイメージさせる形で、「御幸」という言葉そのものが八坂神社の祭礼「山口祇園祭」の「御神幸」「御還幸」のように往来へのお出ましを示すこと、「お幸せに」という意味にも通じることから選ばれた。そして「まちなみアート」の期間中には、このロゴがあしらわれた軒先のれんが、エリア内13カ所に掲げられる。主催者は「のれんを見つけに、ゆっくり、のんびり探し歩いて」と呼びかけている。
二つの新商品が開発・発売
そして、二つの新商品も開発・発売される。
一つ目は、縁起菓子「鶴亀」。発売するのは、1877(明治10)年創業の菊寿堂福信(下竪小路、TEL:083-922-1259 )で、「情緒ある街並みに似合うお菓子を」との要望に応えた。古来より縁起が良いとされる“鶴”をかたどった豆大福と、“亀”の甲羅のように焼き上げた同店看板商品のスイートポテトの組み合わせは、4代目店主・福井英輔さんの技で誕生した。パッケージデザインは、赤岩さんが担当。「まちなみアート」が開かれる5日間限定の販売で、1日50箱限定。価格は1箱1000円(税込み)。
縁起菓子「鶴亀」
二つ目は、お香「竪小路香ブラック」「竪小路香ホワイト」。山口市に縁のある画聖雪舟の墨絵から発想を得て、開発された。香山公園の風、一の坂川のせせらぎ、龍福寺参道の紅葉など、大殿地域の自然をモチーフに、二つのオリジナルの香りが創作。焚いてもお香の灰が崩れない新技術を導入しており、色の変化も楽しめる。イメージキャラクターに、今年5月にテレビ番組「朝だ! 生です旅サラダ」で同地域を紹介した女優の青山倫子さんを据え、パッケージデザインは赤岩さんが担当した。価格は各1000円(税込み)で、期間中5日間は八坂神社鳥居近くの中川屋食料品店(下竪小路)隣の「総合案内」で販売。それ以降は、山口ふるさと伝承総合センターで購入できる。また、青山さんは20日(土)に来山し、会場のあちこちでお香のPRや販売に携わる。
2種類ある「竪小路香」
大殿地域の魅力発信
赤岩さんの作品展「和と書のArt」は、龍福寺本堂が会場。大内氏館跡に再興されたこの場所が、14代当主大内政弘が詠んだ「捨塵和歌集」の書で飾られる。また、23日午前11時から正午まではトークイベントも開催。各作品に込めた思いを赤岩さんが語るとともに、「自分たちの手で自分たちの住むまちを美しく飾る」をテーマにしたパネルディスカッションも開かれる。定員は20人で、要事前申し込み。パネリストは赤岩さんと、まちなみアートプロジェクト実行委員会の小田雅彦会長、山口ふるさと伝承総合センターの小山哲彦館長、そしてえひめ街並博で会場演出プロデューサーなどを担当した渋谷龍さんの4人が務める。多くの博覧会や町おこしイベントにかかわってきた渋谷さんは、山口大学の卒業生。「竪小路には、大内時代からの古き良き街並みが残っている。学生時代に世話になった山口に恩返しをしたい」と、同催しに参加した。前記新商品の監修にも携わっている。
「マッチング竪小路」と名付けられた実験店舗は、中川屋食料品店に20日から23日にかけて設けられる。竪小路の「食材拠点」として根付いている同店で、仁保が本社の秋川牧園の人気商品を限定販売。さらに隣の総合案内では、酒店のムラタ(上竪小路)おすすめの山口県の地酒が、日替わりで角打ち販売される。
その他の主なイベント・内容・出展者・期間・会場は次の通り。
「アートミーツ」 やまぐち新進アーティストによる、さまざまな場所における作品の展示販売・松村憲治(金属作家)、土谷寛子(イラストレーター)、臼杵万理実(美術家)、竹部徳真(木工作家)、山口功(美術作家)、鈴木啓二朗(現代美術作家)、佐々木範子(画家)・11月19日(金)~23日(火・祝)・竪小路周辺 「アートマーケット」 山口市在住の12人のアーティストによる作品の展示販売・いいだみつこ(とんぼ玉)、伊賀晶子(日本画)、角俊弥(木漆工)、佐伯和章(彫金アクセサリー)、重田木型(木のおもちゃ)、伊藤太一(吹きガラス)、多々良暁子(彫金アクセサリー)、谷康弘(サウンドパフォーマンス)、ハセガワタカシ(金属・イラストレーション)、山口功(アート)、藤井卓也(皮革)、小山祐和(ガラス)・11月20日(土)~21日(日)・山口市菜香亭 「アートミーツアクター」 山口市内で活動する劇団によるパフォーマンス・劇団シバイヌ、ユニット・ピコ、演劇ユニット・石ころ、桑原滝弥他・11月20日(土)午前11時~午後3時・大内氏館跡池泉庭園 「やさかの杜ステージ」 (会場:八坂神社)筝曲演奏・生田流正派光月会・11月20日(土)午前10時~10時10分▽アトリエa.p.rファッションショー・11月21日(日)午後1時~1時15分、3時半~3時45分▽音楽ステージ・和田名保子(オカリナ)、べすぱ、山口紘子(バイオリン)他・11月20日(土)、21日(日)午前10時~午後4時
さらに、ストリートパフォーマンス、「まちなみ生け花」、「どこでも紙芝居」、キッチンカーの出店、合唱披露などが予定されている。
加えて、期間中の同エリアでは、さまざまな主催団体による多くのイベントが実施される。山口ふるさと伝承総合センター(下竪小路)では、開館30周年と「まなび館」リニューアル記念事業「やまぐち伝承ものづくり祭り」が20日と21日に開催。さまざまな展示、体験、購入などができる。山口伝承135周年記念「こどもたちに伝える鷺流狂言記念公演」は、観覧無料で20日午後2時から4時にかけて、野田神社能楽堂(野田1)で開かれる。23日午後1時には山口天神祭の備立行列が八坂神社から竪小路を通る。
詳細は、山口市ウェブサイト(https://www.city.yamaguchi.lg.jp/soshiki/23/108117.html )を参照のこと。
※源氏香(図)とは
香道の組香の一つ。5種類の香をそれぞれ5包ずつ計25包つくり、任意に5包を取り出して焚き、他の人々がその異同をききわけて、5本の縦線に横線を結んでできる52の図で示しあてるもの。各図には、源氏物語54帖(桐壺と夢浮橋を除く)の帖名がつけられている。