山口商工会議所(河野康志会頭)の「新山口都市核づくり委員会」(臼渕厚史委員長)による提言「新山口都市核 未来都市構想」が、このほど発表された。
同商議所は今年6月、山口市における二つの都市核の一つ、山口都市核の「山口市中心市街地 未来都市構想」を策定。「一人ひとりが輝き、豊かな生活を実感できる街へ」をテーマに、50年後の理想像を提言した。
そして、もう一つの都市核「小郡都市核」における50年後の理想像を提言しようと、同委員会は7月に始動。5回にわたる協議を9月末までに行い、提言書にまとめた。構成メンバーは、小郡町在住の男性経営者や、市内外在住の女性ら7人。オブザーバーも参加しつつ、またそれぞれが従業員ら周囲の人にもヒアリングするなどして、意見を積み重ねていった。
臼渕委員長は「山口都市核は、行政、文化、歴史、教育、観光などを充実させる役割を担っている。一方小郡都市核には、交通結節点である優位性を生かし、経済的発展をリードしていくことが求められる。この地域が新しいビジネスエリアとして成長していくことで、二つの都市核がもたらす好影響は市にとどまらず、県全域に波及していくはず。委員会では、初期段階で全体コンセプトを決定し、どのような機能をどこに整備したら良いか、具体的な提案をメンバーそれぞれが積極的に示していった。そして『自分もそう思う』『その施設にこれを加えたらもっと良くなる』など、意見に意見が重なり合い、良い構想が組み上がっていったと感じている」と話す。
「新山口都市核 未来都市構想」のテーマ(コンセプト)は、「いいこと見つかる つながり始まる 暮らしやすいまち」。次の6項目で構成されている。
【景観について】(早期改善が必要)
新山口駅の利用者が最初に目にするのは駅周辺の景観であり、ここは県・市の印象を決める重要なエリア。さらに、安心して暮らし、経済活動ができるような整備を進めることが急務と考えられる。また、山口都市核との連動性を高め、“ひとつのまち”として「もっと知りたい」と思われるような魅力を発信することが求められる。
・新山口駅南口=軒裏の改修、地下通路の改修
・風の並木通り=街灯の適正化(明るさ、時間、設置数)
・大正通り・明治通り=一方通行進路方向の変更
・唐樋川=植樹(桜、紅葉)、ウッドデッキなどの設置
・公園の樹木・街路樹の適正な管理(定期的な伐採)
【新山口駅直結型の建造物(駅南)】
コンシェルジュのような役割を持った、新山口駅直結型の建造物を建設。その場所に行けば、県内・市内のさまざまな情報が手に入り、ホスピタリティの向上を図ることができる。
[屋上]芝生スペース(ドッグラン、バーベキューガーデン、フットサルなどの体験と集いの場)
[3階]産業集積フロア(成長産業「ソフト開発」等)、ブレーンワーキング(グループ本社や県央本部等の集積)、コワーキングスペース
[2階(新山口駅南口直結)]県内全域の物産・飲食店、観光、ビジネス(農商工)に関する相談窓
口、定住相談窓口、複数のカフェ
[1階]タクシー、バスターミナル、駐車場
【ガーデンシティの整備】
新山口駅北口エリアの近くに、土地活用の面からも効率性に優れるマンションエリアを造成。そこは容積率の規制を緩和して、400%以上とする。その中心部に山口中央公園のような芝生公園をつくることで、普段は憩いの場として、時にはイベント利用もできる場を提供する。新幹線停車駅前に形作られる、緑豊かな公園と低・中・高層のマンションからなるガーデンシティは、駅利用者や来街者に対してこの地の精神的豊かさと安らぎを伝え、定住人口の増加に寄与する。
【住宅・オフィスエリアの整備】
新たな雇用が生まれることで増加する定住人口に対応するため、居住環境やビジネス環境に配慮したエリア整備を行う必要がある。
・嘉川や陶方面=土地が広く戸建てでゆったりと暮らしたい人向けの住宅エリア
・新山口駅南口=企業の中枢機能や広いオフィスを希望する事業者向け、または職住近接を希望する事業者・居住者のためのエリア
【モール施設・新産業物流拠点】
交通結節点である強みを生かし、県内全域を商圏とする、全天候型で非日常的な体験を楽しめるモールを誘致。さらに、J1対応サッカースタジアムを新設することで、新山口エリアへの滞留時間を増やし、地域全体への経済波及効果を高める。また、椹野川への橋の新設は、名田島、陶方面への経済波及と利便性向上を図ることができる。そして、地理的な優位性を最大限に生かし、新たな産業物流拠点として利用できるエリアを整備し、民間活力の導入を促す。
【その他】
土地の有効活用を図るためにも、新山口都市核エリア全体を対象とした駐車場の再編整備を促進。駐車場不足に対応できるようにする。
提言から実現へ
同委員会では「今以上に人が集い、新たな可能性が生まれ、次世代に花開いていくことを目指し、提言をまとめた。この提言がその契機となり、山口都市核と小郡都市核が両輪となってひとつの街として大きく発展し、都市間競争に埋没することのない魅力あふれる街へと成長していくことを希望する」と締めくくっている。
同構想は、山口商工会議所のウェブサイト(http://www.yamacci.or.jp/shinyamatoshi/index.html)で公開されている。
11月20日(土)付サンデー山口では、「新山口都市核 未来都市構想」の内容を紹介しました。