バスに乗って買い物に出かけた。何日分かの食料を買い込み両手に下げて帰りのバスに乗った。見た目には平和な見慣れた外の景色をぼんやり眺めていた。自衛隊の車とすれ違った。
十五年くらい前にイタリアで、観光バスの窓の外に戦車を見た。数台続く車列に目を見張った。彼等は陽気にハッチから顔を出し、私達に笑って手を振った。若く美しい青年たち。
もし、今、この循環バスに戦車の砲が向けられたら・・・このままバスごと拉致されたら。どうしよう。
乗客は私を含めて四人。全て私と同じ高齢者の女性。男性は運転手さん一人。彼も若くはない。戦車とバスでは到底戦えない。拉致されたら日本政府が動き助けてくれるだろうか。北朝鮮に拉致されためぐみちゃんの前例もある。希望は少ない。
バスの中には五人いる。各々買い物袋を持っている。袋の中にはなにがしかの食料があるはずだ。全員のそれを床に並べてどのように食い繋ぐか、協議しなければならない。私は、すぐ食べられるものとして牛乳と食パンとおはぎを持っている。いざとなれば浅利の殻をわり食べよう。茄子にかぶりつこう。
臨戦態勢でいたら、私の降車のバス停に着いてしまった。皆さんご無事で。ヨイコラショとバスを降りた。