2020年シーズンに続くスタジアムの入場制限(約7000人)、東京2020オリンピック開催による1カ月弱の試合中断、豪雨による試合延期など、2季連続での異例なスケジュールとなった2021年J2リーグ。「J1へは自動昇格2枠・J3への降格はなし」という2020年の特例ルールに助けられた同シーズン最下位のレノファだったが、そのため2021年シーズンは「J3への降格4クラブ」という厳しい条件でのリーグ戦となった。
そして、「勝ち点60」と「2年かけてJ1昇格」を目標に戦ったレノファ山口FCの戦績は、10勝13分19敗、勝ち点43の15位だった。9月には渡辺晋監督が退任、名塚善寛ヘッドコーチが後任として監督に就任する交代劇もあり、苦しい戦いが続いた6年目のJ2シーズン。この特集では、10試合ごとに試合を振り返るとともに、選手の個人成績と名塚監督のコメントをお届けする。
1~10節(2月27日~4月25日)
4800人を超えるサポーターが駆け付けたホームでの開幕戦(松本山雅FC戦)は、スコアレスドローだという結果だった。第2節と第3節は連敗。第4節(ファジアーノ岡山戦)も好機を生かせずスコアレスドロー。アウェイで迎えた第5節のジュビロ磐田戦で、#46高井和馬選手、#31草野侑己選手があげたゴールを、#21関憲太郎選手が守り切り、5戦目にしてようやく初勝利を飾った。
連勝を、と迎えた第6節(栃木SC戦)、第7節(東京ヴェルディ戦)は勢いに乗れず連敗したが、第8節(ザスパクサツ群馬戦)では#16浮田健誠選手が今シーズン2ゴール目を決め、接戦を制し勝利を勝ち取った。
しかし、引き分け、黒星が続き、10試合終了時点で2勝3分け5敗、勝ち点9で22チーム中20位。総得点数は最下位と厳しい滑り出しになった。
11~20節(5月1日~6月27日)
第11節(FC町田ゼルビア戦)は、2-0で快勝。1敗を挟み、迎えた第13節(ツエーゲン金沢戦)。大卒ルーキーの#24梅木翼選手のJリーグ初ゴールを守り切り、10戦勝ち無しだった相手から執念の勝利をつかみ取ると、第14節(SC相模原戦)でも#14澤井直人選手が移籍後初ゴール。シーズン初の2連勝で勝ち点18、順位は11位に。さらに、第15節(ブラウブリッツ秋田戦)を引き分けて順位は10位になったが、ここからレノファは長いトンネルに入ってしまう。
第16節(V・ファーレン長崎戦)を3-0で完封負けした後は、引き分けと黒星が交互に続き苦戦。第17節(愛媛FC戦)では「先制点を奪われると黒星になる」ジンクスをはねのけ、引き分けに持ち込む意地を見せたが、6月は勝利を上げられず、15位に順位を落とした。
21~30節(7月3日~9月19日)
2引き分け後にホームで迎えた第23節のブラウブリッツ秋田戦では、序盤から積極的な攻撃を仕掛け、優位な試合展開に。前半26分のFKからPKのチャンスを得ると、FWの#46高井選手がGKの反対を突く右隅へ見事にゴールを決めた。貴重な1点を全員で守り切り、9試合ぶりに約3000人のサポーターに勝利を届けることができた。長いトンネルを抜けた瞬間だった。
GKの#21関選手の好セーブを始め守備陣の活躍も見られ、7月は1勝2分けで負け無しだったが、順位は15位のままだった。
オリンピック中断後の初戦は無得点で黒星を喫し、第25節(ツエーゲン金沢戦)は悪天候のため延期に。第26節(ザスパクサツ群馬戦)では、前半15分に先制された後も41分、45分と前半だけで3失点。3-0で完封負けし、2連敗に。何とか連敗脱出を、と臨んだ第27節のモンテディオ山形戦では、前半38分、FKから#31草野選手がゴールを決め、先制。後半に追いつかれたが、同26分には#10池上丈二選手がゴールを決め、勝ち越し。守備もGKの#21関選手を中心に守り切り、貴重な勝ち点3を手に入れた。 勢いを得たかに見えたが、その後2試合は決定力不足で連敗。延期になっていた第25節(ツエーゲン金沢戦)では、先発メンバーをがらりと変えて試合に臨むと、前半10分、#10池上選手のゴールで先制。後半は相手に攻め込まれる場面もあったが、#46高井選手や高校生FWの#38河野孝汰選手らのシュートで、シーズン最多の4点をあげ、快勝。しかし、第30節(SC相模原戦)では完封負けといやな流れに。
31~42節(9月25日~12月5日)
第31節(V・ファーレン長崎戦)では、前半15分に先制を許すなど序盤から苦しい展開に。攻守がかみ合わずその後も失点を重ね、黒星。渡辺晋監督は試合終了後に退任し、後任に名塚ヘッドコーチが就任した。
名塚新監督の初戦となった第32節(東京ヴェルディ戦)。前半に#43大槻選手が先制したものの、後半は立て続けに失点。シュート数は相手を上回るも、流れを引き寄せられず逆転を喫した。第33節(アルビレックス新潟)も完封負け。第36節終了時点で順位は17位になり、J3降格圏の19位との勝ち点差は2と、J2残留も危ぶまれ始める中、守備や攻撃で名塚体制が浸透し、勝利の兆しが見え始めた。
第37節のFC琉球戦、互いに譲らず前半を0点で折り返すと、後半に#46高井選手のFKで先制。その3分後には#3ヘナン選手が追加点を決めて2-0に。攻め込まれる苦しい時間もあったが、守護神・#21関選手がゴールを死守し、8試合ぶり、そして名塚監督の初勝利を完封で飾り、勝ち点3を獲得した。第38節(大宮アルディージャ戦)も先制されたもののすぐに追いつき、後半40分には#46高井選手が2試合連続で直接FKを決め、逆転に成功。5月以来の連勝、そしてシーズン初の逆転勝利で、勝ち点41、順位は14位に浮上した。
このままの勢いでJ2残留を決めたいとホームで臨んだ第38節(ギラヴァンツ北九州戦)。序盤から積極的に攻めるが、同じくJ2残留を目指す相手から1点が奪えず失点を許してしまい、タイムアップ。6試合ぶりの黒星で、残留は持ち越しに。
ホーム最終戦の第41節(ヴァンフォーレ甲府戦)には、J2残留を願う約4600人のサポーターが集まった。前半、後半とも得点の好機を生かせず一進一退の中、パスミスからボールを奪われ失点。ホーム最終戦を勝利で飾ることは叶わなかったが、他試合の結果により残留が決定。第42節(愛媛FC戦)では、21歳(当時)の#42橋本健人選手がプロ初ゴールをあげるも、後半に追いつかれ引き分け。勝ってシーズンを終えることはできず、最終順位は2019年シーズンと同じ15位だった。
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シーズン序盤からなかなか波に乗れず、決定力不足から苦しい時期もあったが、後半は守備でも攻撃でも粘り強さが光ったレノファ山口。2022年のJ2リーグも22チームでの戦いとなる。名塚体制2年目の今年、積極的にボールを追う攻撃サッカー「レノファスタイル」を貫くべく活躍する選手たちに期待しよう。
「レノファらしい、攻撃的なサッカーを」 名塚 善寛監督に聞く
昨季は残留争いという、苦しいシーズンでしたが、最後は選手、スタッフの頑張りとサポーターの皆さんの後押しが力となり、来シーズンにつながる結果を残すことはできたと思っています。
誰一人最後まで諦めないで戦い続けたことは良かった部分ですが、それを勝ち点につなげることができない試合が多くありました。今季は勝ち点につながるよう結果にこだわっていくとともに、レノファらしい、攻撃的なサッカーで、見ている方に「またスタジアムで応援したい」と思ってもらえるよう一試合一試合、勝利のために全力で戦います。
サポーターの皆さん、いつも応援ありがとうございます。今年は一つでも多くの勝利を皆さんに届けられるよう、常に前を向き戦っていきますので、ぜひスタジアムで共に戦ってください。よろしくお願いします。