星野道夫さんは、アラスカの自然と人々のくらしを撮り続けた写真家で、撮影中の事故により若くして亡くなられました。
この本は、遺された写真やメモ等をもとに福音館書店編集部が作ったもので、母グマに語りかける形にまとめられています。
彼が撮らえたクマの表情は、みなとてもおだやかです。それは、生き物同志が広大なアラスカの自然の中で均衡を保ちながら、自分らしい生き方をしているからこその表情なのかもしれません。一緒に遠くを見つめるクマの親子の写真に添えられた「おれと おまえは、はなれている/はるかな 星のように」という言葉は、人間とクマとの間に広がる「遠さ」を意識しつつ共存していくことの大切さを伝えています。
また、「気がついたんだ/おれたちに 同じ時間が 流れていることに」という言葉からは、すべての生き物が、この地球上で、時間と空間を共有しながら生きていることのすばらしさに気付かされます。
出版されてから20年以上たった本ですが、星野さんからのメッセージは今なおあざやかに届いてきます。
(ぶどうの木代表 中村 佳恵)
福音館書店
文・写真 星野 道夫