一月初めに75歳の誕生日を迎えた。その日の午後、今日まで無事に過ごしてこられたお礼を言おうと、近くの神社に行った。境内の石段をゆっくり上っていたら、横を飛び跳ねるような足音で若い男性が追いこしていった。私は躍動する姿態をしばらく見ていた。
近頃、若い男性の憂いのある項やピーンと伸びた背、締まったお尻に目が行くようになった。高く振られる手、リズミカルにバスを降りる二本の足。
私は、若い頃には全くそのようなものに目がいかなかった。どこに目がいったかというと顔の表情であった。その動きから彼等が何を思っているのか探ろうとしていたように思う。
若い女性の円い優しい身体。良く動く柔らかい唇。ぽってりとしたお尻。真剣に本を読む引き締まった横顔。いい匂いの彼女達。
75歳の私は若い見事な身体を鑑賞している。命を生み出すことのできる身体。それに見惚れている。
つまり、私と彼等達とは別の世界にいるということだ。若い彼等は中心の円の中にいて活発に細胞分裂を繰り返している。動いている。私達はその外側の円にいて彼等を見ている。もう戻れない中心の円の、命の躍動に見惚れている。静かな目で。
後期高齢者とはそういうことかもしれない、と誕生日に微笑む。