この詩集は、まど・みちおさんが作った千扁を超える詩の中から24扁を選んで編まれたもので、うち18扁には四人の写真家の撮った写真が添えられています。
写真は、詩にうたわれた対象そのものをカメラにおさめたものもあれば、「ことり」「リンゴ」などのように、写真家が詩を読んでイメージを広げ、その先に見えてきたものにレンズをむけたものもあります。
たとえば「正しいと 思ったことだけを/ほんとうと 思ったことだけを/美しいと 思ったことだけを」残しながら小さくなっていくけしゴムをうたった詩「けしゴム」に添えられているのは、ほぼ葉脈だけになった葉の写真です。写真家のまなざしを通して、けしゴム以外にも正しさ美しさを残しながら消えていくものが身近にあることに気づかされました。
詩と写真を重ね合わせて読んでいくと、思いがけない方向に導かれ、詩だけを味わっていたときには見えなかった景色に出会うことができます。
終頁いっぱいに広がる夕焼け色の海の写真は、まどさんの詩すべてを包みこんでいるように思いました。
(ぶどうの木代表 中村 佳恵)
フォイル
詩:まど・みちお
写真:奈良 美智、川内 倫子、長野 陽一、梶井 照陰