藩主専用の宿泊施設である「御茶屋」は萩往還沿いの佐々並、山口にも設けられていたが、ここ三田尻御茶屋(七代藩主重就の法名に因んで英雲荘ともいう)は最大規模のもので、迎賓館的要素を持つものだった。文久3年、京都での政変により都落ちした七卿がまず腰を落ち着けた場所としても有名で、その当時は二階から穏やかな瀬戸内海を眺められた。また戦後の一時期には、広間の畳を取り払って進駐軍の将校クラブのダンスホールとして使用されていたこともあったという。
平成22年に保存復元工事が完了し、その後庭園内の水路に水が引かれて往時の雰囲気を完全に取り戻している。現存する唯一の御茶屋でもあり、是非見学をお勧めしたい。
文・イラスト=古谷眞之助