明治から昭和初期に全盛だった無声映画(活動写真)には、スクリーンの横でせりふやナレーションを入れる活動写真弁士(活弁士)は欠かせない存在だった。全盛期には全国に約8000人おり、周防正行監督映画「カツベン!」(2019年)でも当時の活躍ぶりは描かれている。その後「トーキー」の普及により減少し、現在プロの弁士として活動しているのは全国に十数人だという。
プロの活弁士および楽器奏者によって、昭和初期の無声映画を現代によみがえらせる「キネマと音楽の夕べ」が、3月12日(土)午後4時から、洞春寺(山口市水の上町5)で開かれる。この催しは2009年以降、全国各地の居酒屋から大ホールまでさまざまな会場で上演されており、山口市では2016年のニューメディアプラザ山口での公演以来、6年ぶりとなる。
上映予定作品は、「血煙高田馬場」「珍妙幌馬車」「動絵 狐狸達引」「子宝騒動」の4本。これらの作品に、坂本頼光(活弁)、小林武文(打楽器)、鈴木広志(サクソホン)、大口俊輔(ピアノ、アコーディオン)の4人が、活弁と生演奏で新たな「命」を吹き込む。
活弁士の坂本は、1979年生まれ。21歳の2000年に弁士デビューを果たした。映画館、ライブハウス、神社仏閣等での活弁ライブを続けており、寄席や落語会への客演も多数。東京スカイツリーの公式キャラクター・スコブルブルの声やTVアニメの声優、「ミスタードーナツ」「ジョイサウンド」等のCMナレーションも担当しており、映画「カツベン!」では主役の成田凌や共演の永瀬正敏らの活弁指導を担当した。2019年度国立演芸場花形演芸大賞で金賞受賞。
小林、鈴木、大口は、チンドン屋風の音楽をベースに世界各国の音楽を組み合わせた演奏で知られた「チャンチキトルネエド」(2013年に活動休止)のメンバー。NHK朝ドラ「あまちゃん」(2013年)の劇中音楽を演奏する「あまちゃんスペシャルビッグバンド」にも参加した。それぞれ、舞台、ライブ、レコーディング、テレビなど、多方面で活躍中だ。
今回の公演は、昨年8月からの振替公演。活動写真弁士で、ラジオ・テレビの司会者・俳優・作家として活躍した徳川夢声没後50周年(昨年)を記念して企画された。また、開演に先立ち、「幕末維新山口れきし散歩」など本紙への連載でも知られる郷土史家・松前了嗣さんが、「前座」を務め話す。
前売り券は、一般3000円、高・大学生1500円で、洞春寺、YCAM、山口市民会館、C・S赤れんがで購入できる。当日券は各500円高。中学生以下は入場無料だ。問い合わせは、米本太郎さん(TEL090-6406-0245)へ。