私が、福祉の仕事を始めて20年。「福祉」とは何かとずっと考えてきた。「福祉=幸せ・幸い」と表現される事が多い。幸せとは自分だけで完結するものではないと考えていた。
そんなある日。早朝5時半ころ近くの神社でお参りして出勤するのだが、お参りをすませ、参道を戻っていると、ランニングウェア姿の女子学生らしき子と遭遇。「おはようございます」。気持ちの良い挨拶をしてくれた。
「朝早くから練習お疲れ様。試合の必勝祈願かね?」と声をかけると「いいえ…。ライバルが、ケガをして今度の大会に間に合うか、間に合わないかギリギリで。一緒にタイムを競い合ってきた仲で、彼女なしでは私も成長できなかったし、その子がものすごい努力をしてきたことも知っているので、どうしても一緒にレースに出たいんです! だから早く治るようにお参りに通っているんです。では練習に行ってきます。失礼します」と軽快に走り出した。
もしもその子がレースに出なければ、もしかしたら自分は上位を狙えるかもしれない。でもそれは関係なく、ライバルのケガの回復を願って、練習途中に神社にお参りするココロ。そんなスポーツマンシップと彼女の「ヒト」を想う気持ちに、爽快に走り去る背中を観ながら、大人である自分の未熟さが恥ずかしくなった。
「人の幸せ、自分の幸せ=ヒトがより良く生きる、そして活かされる」そんな「福祉」の原点に触れた気がした朝だった。
投稿者:福祉施設職員 谷口洋一さん