〈とんでる〉を『新明解国語辞典』で引くと、いきなり、「翔んでる女[=既成の道徳や社会通念にとらわれず、それぞれの社会で自由な活躍をしている女性]」とある。ひと昔前の流行語ではあるが、【翔んでる】というのはやはり、女にこそふさわしい。
ところで一カ月ほど前のこと、私は冬季オリンピックの【跳んでる】女たちに夢中だった。誰もかれも華々しく跳び上がっては、気持ちいい程にクルクル回転していた。とりわけ心奪われたのが、坂本花織選手。ロシア娘の4回転ジャンプなんぞには目もくれず、ひたむきに流麗なるスケーティングに集中していた。おまけにその笑顔が、雪信筆のこの華麗なる【飛んでる】女とそっくりなのだ。私にとって、彼女の跳躍は天女の飛翔に等しかった。
ちなみに、作者の清原雪信は江戸時代初期の女性絵師。一門の男性絵師と駆け落ちするような【翔んでる】女だったようである。
※「ミネアポリス美術館 日本美術の名品展」(3月1日から)展示作品より
山口県立美術館副館長 河野 通孝