朝、鈍い日が照つてて
風がある。
千の天使が
バスケットボールする。
私は目をつむる、
かなしい酔ひだ。
もう不用になつたストーヴが
白つぽく銹(さ)びてゐる。
朝、鈍い日が照つてて
風がある。
千の天使が
バスケットボールする。
【ひとことコラム】「千の天使」のバスケットボールは酔眼に浮かぶ幻想とも頭痛がもたらす幻聴とも解されます。日差しや風、艶を失ったストーブという現実感のある描写と交錯させながら、二日酔い独特の心境を巧みに表現していくところに、詩人ならではの感性とユーモアを感じさせます。
中原中也記念館館長 中原 豊