しいたけ菌の埋め込まれた菌床を買った。毎日七個くらい収穫でき、味噌汁や煮物、天ぷら、バター焼きにして連日食べた。菌床に水を与えるだけで、魔法のようにポンポン生えるのが不思議で、伸びる瞬間を捉えたくてじっと見ていたが、わからなかった。(横断歩道の歩行者信号の人間の形が赤から青に変わるのは、どこからか? 手か、足か頭か? 見ていたら身体が同時に色づく。これは目で捉えられた)。
しばらくすると、しいたけが生えてこなくなった。さて? 説明書を読むと、『菌床に水を与えながら、十日前後の休養を与える。その後、ショックを与える』とある。ショックとは、水攻めである。『バケツに水を入れ菌床を浸け、重しを置いて一昼夜。次に低温ショックを与える。五日冷蔵庫に入れる』。これでも発芽しない時は、何度でもこのショックを繰り返す。起きろ、起きろ、仕事だぜ。
歌を忘れたカナリアのショック療法は、後ろの山に捨てるとか、背戸の小薮に埋めようとか、柳の鞭でぶとう、という物騒な案が提案された。いえいえ、それはなりません、ということで豪華な象牙の舟に乗せ、月夜の海に浮かべたら歌を思い出す? いえいえ、優しく背をなでればきっと歌い出す。愛なのです。
しいたけ水攻め開始!