暗い森の巣穴の中に四匹のおおかみの子が眠っていました。お母さんは食べ物を探しに行って留守。そんなときには外へ出てはいけないことになっています。
そうと知りながらも、ふと目をさました四匹は、森に漂うあまいにおいに誘われて外へ出て行ってしまいました。もみの大木の下を耳をピンと立てて進む姿は緊張感でいっぱいです。
やがて夜が明け、初めて目にする明るい世界に四匹は興味津々。湖に飛びこんだり、猟師に近付いたりと向こうみずに動き回っていましたが、そのうちくたびれ、家に帰りたくなりました。でも道がわかりません。「あおーん」と鳴いていると、ようやく遠くから聞きおぼえのある声が答えてくれました。
家に帰りつき、お母さんの前で耳としっぽをたれる姿には反省の色がうかがえます。でも、これでこりたわけではなく、「ちょっとこわかったけど、とても おもしろかったね。また みんなで ぼうけん できるといいな!」
子どもはみんな、この四匹のように、冒険をくり返しながら自分の世界を広げていくものなのでしょう。
(ぶどうの木代表 中村 佳恵)
徳間書店
文:スベンヤ・ヘルマン
絵:ヨゼフ・ヴィルコン
訳:石川 素子