法隆寺金堂と五重塔は、約千三百年前に建てられた世界最古の木造建築です。
この本では、法隆寺がどのようにしてつくられたのかを、昭和の大修理にたずさわった棟梁、日本建築の研究者、建築を学んだイラストレーターの三人がときあかしています。
法隆寺の敷地面積は約三万坪。その中に多くの建物がつくられていますが、それらは当時の工人がノミやツチなど基本的な大工道具だけを使って仕上げていったものなのです。緻密に描かれた絵を見ていくと、耐久性と美しさを備えた建物がどのようにしてできていったかがよくわかります。
柱は良質のヒノキ。木のくせを見極めながら寸法を調整するなど素材を生かした仕事がなされていて、そのような工人の技量が建物を支えてきたのです。
ただ、技術だけで長く残していくことはできません。法隆寺にはこれまで何度も大きな修理がほどこされてきました。それは、まつられている聖徳太子を篤く敬う人々の心あってこそできたことなのです。
法隆寺を通して古代日本人の知恵に触れられる、読みごたえのある一冊です。
(ぶどうの木代表 中村 佳恵)
草思社
著者:西岡 常一、宮上 茂隆
イラスト:穂積 和夫