北海道の原生林に囲まれてひっそり広がる湖には、夜になるとしまふくろうの親子があらわれます。まだ自分でえさをとることのできない子どものために、親鳥は夜通し交代で魚をとってくるのです。
三日月に照らしだされた湖面には、生きものの姿は見えません。でもおとうさんは、月影のかすかなゆれを見のがしませんでした。ねらいをさだめて音もなく近づき、鋭いつめで魚をとらえると、再び空中に大きく舞いあがりました。
魚をつかみ、ページいっぱいに翼を広げたしまふくろうの姿は、月の光をあびて神々しく輝いています。
猟はひと晩中続けられ、やがて朝霧がたちはじめると、親子は寝ぐらへ帰っていくのです。
日々くり返される動物たちの営みをありのままに描いた木版画絵本。作者は紋別生まれの木版画家です。
この本は47歳のときに出された処女作で、以来、北海道の原始的で神秘的な自然と、そこに生きる動物たちをテーマに絵本を作り続けておられます。どの作品からも、鋭く力強い彫りをとおして、野生動物の生きる覚悟が伝わってきます。
(ぶどうの木代表 中村 佳恵)
絵本塾出版
絵・文:手島 圭三郎