山口市出身のプロレスラー・大谷晋二郎さん(49)が、4月の試合中に頚髄(けいずい)損傷の大けがをして、首から下がまひ状態になっている。「もう一度立ち上がれ!」と、親交のあるプロレスラーらによる「大谷エイド大会」も6月4日に開かれた。募金活動など、各プロレス団体や山口市内における支援の輪も広がっている。
大谷さんは、大内小・中学校卒業後、山口県鴻城高でレスリングに打ち込み、インターハイや国体にも出場。高校卒業後に上京し、アニマル浜口ジムの門をたたいてプロレスの基礎を学び、1992年2月新日本プロレスに入門。同年6月25日の山本広吉(現・天山広吉)戦でデビューした。新日本プロレスではIWGPジュニアヘビー級や同タッグ王座に輝くなど主に“ジュニア戦線”で活躍した。そして2001年3月に橋本真也らと「プロレスリングZERO-ONE」の旗揚げに参加。以降は同団体の流れをくむ「ZERO1-MAX」「ZERO-1」に所属し、代表を務めるなどもした。“熱く、何度でも立ち上がる戦い”がファンから支持される一方で、全国の小中学校や児童施設でのいじめ撲滅を訴えるチャリティープロレスや講演活動にも力を入れてきた。
今年4月10日に東京・両国国技館で開催された「ZERO-1旗揚げ20&21周年記念大会」のメインイベントで、大谷さんは同団体のエースとして、プロレスリング・ノア所属の杉浦貴選手と世界ヘビー級王座をかけて対戦。だが、開始15分過ぎに杉浦選手の放ったコーナーマットへの投げっぱなしジャーマンスープレックスを受けた際に全く動けなくなり、救急車で緊急搬送された。同13日に手術を受け、無事成功。命に別条はないものの、首から下がまひしている状態が続いている。
募金活動など支援広がる
6月4日に東京都・大田区総合体育館で開かれた支援大会「押忍PREMIUM ONE TEAM ZERO1! 大谷晋二郎エイド!! 何度でも立ち上がれ!」には、10団体・58選手がノーギャラでリングに上った。大谷さんに憧れてZERO-1に入門した山口市出身の永尾颯樹(さつき)選手も3年目にして大抜てきされ、新日本プロレスの永田裕志選手、真壁刀義選手、本間朋晃選手とのタッグマッチで出場した。大谷さんの父、裕明さんは「これだけ多くの選手が晋二郎への支援の思いを胸に集い、リング上でも彼への応援の気持ちをパフォーマンスしてくれた。彼が30年間続けてきたことが正しかったことの裏返しだと思うし、とてもうれしく、感謝の極みだ」と話す。
同大会に大谷選手は「本日は素晴らしい時間を作っていただき、本当にありがとうございます。本当であれば僕が会場に行き、皆様にごあいさつをしなければならないところですが、来場することができず本当に申し訳ありません。『プロレスとは、見ている人に元気を与えるものである!』いつもはそう叫ぶ僕ですが、その想いは今日出場してくださるプロレスラーが皆、心に秘めている思いだと信じています。今も僕は自分の意志では体を動かすことも、思い通りに言葉を発することもできません。しかしながら、僕は今たくさんのことを学ばせていただいています。毎日支えてくださる病院の先生や看護婦の皆さま、家族や多くの関係者の皆さまのおかげで、今僕の心の中は、人の温かさと優しさがあふれ、感謝の気持ちでいっぱいです。そしてまた強くなった大谷晋二郎は、必ず皆さまの前に帰ります。ずっと近くで支えてくれる僕の家族は、『もう頑張らなくていいよ。もう十分頑張ってきたし、今も頑張っているから今のままで大丈夫だよ』と言ってくれます。でも、大谷晋二郎に限っては、もっともっと頑張るという気持ちでいたいのです。僕が頑張ることでプロレスを応援してくださる皆さんに、勇気や元気が伝わるはずだと信じてるからです。皆、毎日どこかで一所懸命頑張ってるんです。だからこそ何度でも僕は叫びます。『頑張れ!』『頑張ろう!』『頑張るんだ!』『負けてたまるか!』『みんなみんな一緒に頑張ろう!』」とのメッセージを寄せ、妹の葉月さんが代読した。
ZERO-1だけでなく、ノアや大日本プロレスなど、複数のプロレス団体の会場で募金活動が行われており、山口市内でも、江戸金(大市町1)、モリイケ(中市町6)、末廣(米屋町2)、花ちゃん食堂(道場門前2)、山口ふるさと伝承総合センター(下竪小路)、サンデー山口(神田町8)に募金箱が設置されている。そして、藤波辰爾とジャガー横田が「応援団長」を務める「何度でも立ち上がれ! 大谷晋二郎応援募金」(https://otanishinjiro.com/ )は、4月末に開設。振込先は「ゆうちょ銀行 五五八支店(ゴゴハチ支店) 普通口座0227704 口座名義オオタニハヅキ」もしくは「三菱UFJ銀行 広島支店 口座番号0717636 口座名義オオタニユウイチロウ」。集められた寄付金は、大谷さんの兄・裕一郎さんや葉月さんら家族が管理し、治療費やリハビリ費などに充てられる。
裕明さんは「30年にわたりこの業界で頑張ってきたのだから、並大抵の根性ではない。晋二郎本人が『自分は頑張る』」と、弱った体でも力強く言っているだけに、再度ファンの皆さまの前に現れ、復帰できること、親として信じている。元気になったら山口に恩返しもしたい。待っててください」と話している。
大谷裕明さん