クラムさんのレストランはいつもお客さんでいっぱい。誰もが「クラムさんの料理はナンバーワン」と思っていました。
ところがある日、こだわりやの紳士、ホースフェザーズ氏がやってきました。注文したのはポテトだけ。クラムさんはくし切りにしたポテトを下ゆでし、たっぷりのラードで揚げて塩をふり、ほくほくのポテト料理を作りました。が、ホースフェザーズ氏は「ぶあつすぎる。味がうすい」とお皿をつき返してきました。
そんなやりとりを二度三度くり返し、とうとうクラムさんは、向こうがすけて見えるほど薄くスライスしたポテトをかりかりになるまで揚げ、塩をたっぷりかけて出しました。
いたずら心で作った料理でしたが、意外にもホースフェザーズ氏は大満足。料理のうわさはたちまち広がり、多くの人が新メニューを食べにやってきました。
19世紀中頃の実話をもとに作られた作品で、巻末にはクラムさんの写真も添えられています。
食べる側と料理する側のこだわりが一つになって生まれた、ゆかいな「ポテトチップス誕生物語」です。
(ぶどうの木代表 中村 佳恵)
BL出版
文:アン・ルノー
絵:フェリシタ・サラ
訳:千葉 茂樹