寝苦しい夜、庭に出て空を見上げた。小さな星が幾つか光っていたが、空は暗かった。寝際に読んだ詩を思った。
死の領土 本多寿
海が涸れ 山が砕け/銀河が/蛇の脱け殻のように横たわっていた//そこには/空しいひろがりと静寂だけがあり/滅びた太陽の残骸がころがっていた//すでに熱も光も失って/軽石のようにころがっていた//一陣の風も吹かず/太陽とともに滅びた草木と鳥獣虫魚の霊が/塵のようにつもっていた//*//世界は封印された書物のようだった/言葉が闇に吞みこまれ/生命は無にさらされている/この領土に 風は/ふたたび吹き起こるのだろうか新しい太陽は誕生するのだろうか
もしかしたら、現在私達が住んでいる地球には、今と同じ世界が以前にもあったのではなかろうか、と私は思う。なんらかの、例えば強烈な毒性を持つウイルス出現による人類滅亡、度重なる戦争、禁じ手の核使用で誰もいなくなった、異常気象が多発し、宝の水が枯渇し山が砕けて、地球上の生命が死に絶えた。世界は封印された書物。
何億年もかけ地球は修復され、又、同じように最初の生命が出現し、地球の何度目かの歴史が始まった。今、私は何回目の地球の歴史のどの辺りにいるのだろうか。