山口市と萩市にまたがる阿武川沿いの国名勝・長門峡が、2023年3月に指定100年を迎えます。今回は、長門峡の顕彰に尽力した高島北海と焼き物との意外な接点を紹介します。
高島北海(1850~1931)は、萩出身で、維新後、明治新政府の工部省に入省しました。地質学・植物学を専門とし、「山口県地質分色図」(山口県文書館蔵)をはじめ植物の細密画や写生画の秀作を数多く残しています。晩年は、画業を続けながら長門峡などの山口県の名勝地の開発や顕彰に努めました。
写真の焼き物は、大正時代、萩の作陶家・吉賀大雅の作品に、北海が杜鵑花(サツキ)を絵付けしたものです。北海は、萩焼に自分の絵付けをした焼き物を「長門峡焼」と称して販売し、長門峡顕彰のための資金としたのです。長門峡は北海をはじめとした多くの人々の手で守られ、今も私たちに素晴らしい景観を伝えてくれています。
山口県立山口博物館 主任 山田 稔