秋の晴れた日の午後の空は、東は薄い青で、西に向かって徐々に濃い青色となって広がっている。その青の上に白い雲が、短冊形や子供がエイヤーとちぎった〇や四角の形で浮かんでいる。
さしものあの灼熱の夏も終わったのだ。ときおり暑い日もあるが夏の勢いはない。地球は動いている。
秋風やまた雲とゐる人と鳥
高屋窓秋
陽が落ち、夕方になると虫が鳴き始める。秋の虫は、ガチャガチャとかスイチョスイチョ、リンリンと様々に形容されるけれど、私には皆、同じに聞こえる。マツムシもコオロギもなにもかも秋の虫。一括りで解決だ。
かりかりと蟷螂蜂の皃(かお)を食む
山口誓子
食む、と言えば、今年こそ旅する蝶、アサギマダラに来てもらいたくて、庭にフジバカマの苗を五本花屋さんで買ってきて植えた。水をやり三十センチばかりに育った頃、葉を全部緑色や茶色の虫に食べられてしまった。針金のような茎だけが残った。柔らかい葉は虫にはご馳走なのだ。今年もアサギマダラに会えない。
秋の七草いつもひとつを言ひあぐね
指先の冷えて紅葉のなほ赤く
倉橋みどり
句集「寧楽」から。倉橋さんは山口市出身の俳人。「寧楽」主宰。奈良市在住。気鋭の人だ。