ああ、寒い! 今は一月や二月のような本格的な寒さではない分、気持ちもふらりふらりしている。厚手の靴下を履いているが、マフラーはまだまかない。冬用のズボンを履いているが、足首までのブーツは履かない。
東の町に住む友人から「大腸癌になった」という葉書が来た。「うそ! えっ、本当」、なんて葉書の整然とした文字を見ながら連発する。
西の町に住む友人からは「悲しい現代、悲しい民族などというものは存在しない、悲しい人間がいるだけだ(『夕暮れに夜明けの歌を』より)と葉書に二行書いてあった。
二通の葉書を手にした夜は寝付けない。こんな夜は人形劇をやる。
ハワイから来たひらひらの腰蓑をつけた人形のネジを巻き、フラダンスを踊らせる。観客は猪、熊、鼠の縫いぐるみ。日本人形も加える。猪と熊は静かに見ているが、鼠は跳ねて五月蠅い。日本人形は手にしている桜の花を右に左に踊り出す。フラガールはもう無我の境地。熊が私に「梅酒を飲もうぜ」と言う。それではと飴色の梅酒を皆でカンパーイ。「お悩みは何?」と猪が私に身を摺り寄せて訊く。「ないわ」とほろ酔いの私。日本人形は裾をからげて、チャンチキおけさを踊っている。
きっと、明日は晴れで、よい便りが必ず届く。