“剣をとっては日本一に夢は大きな少年剣士”軽快な歌にのってやって来る。エィヤー、オー。胸に赤い風呂敷巻いて、ゴムの刀で切りつける。「ちぇいばい(成敗)してくれる」切られ役は私。「もう悪いことはしません」。
赤銅鈴之助は三歳の雄太君。私は小学四年生。一枚の写真。私は古いアルバムを見ています。
雄太君は現在六十三歳。元気な定年近い会社員。孫が三人いる。今度会ったら私が切りつけてやりましょう。贅肉いっぱいの腹に。エイ、ヤー。
“弱い人には味方する がんばれ 頼むぞ 赤銅鈴之助”
歌いながらアルバムを捲ると、出て来る、出て来る。おお、これは愛犬ロッキー。レンズを凝視の祖父母。両親に伯母。皆、彼岸にいるけれど、アルバムの中ではまだ元気。
これは誰? 小鳩クルミ? 松島トモ子、浅野すずこ? いえいえ、小学三年生の私です。頭にはピンクのリボン。ひらひらのスカート。学芸会で主役の道子ちゃんのバックダンサー。その他大勢の踊り子軍団。私は踊りをよく間違えて叱られたっけ。それでも、リボンとヒラヒラスカートは嬉しかった。日頃はズボンだったもの。昭和三十二年。
秋の夕暮れ、そろそろアルバムを閉じましょう。
“強いぞ僕らの仲間 赤銅鈴之助”