山口商工会議所(以下商議所)の臨時議員総会が2022年9月12日に開かれ、河野康志会頭、河村利夫副会頭、椙山一生副会頭、臼渕厚史副会頭、田中真樹SDGs特任委員長役員が選任された。任期は、2022年11月1日から2025年10月31日までの3年間。新体制での新しい年を迎え、今後の運営方針などについて語り合ってもらった。
座談会出席者
会頭:河野康志(マルニ社長)
副会頭:河村利夫(中国芝浦電子社長)、椙山一生(萩山口信用金庫理事長)、臼渕厚史(山口グランドホテル社長)
SDGs特任委員長役員:田中真樹(御堀堂社長)
3委員会を新設
河野 あけましておめでとうございます。私は2期・6年の会頭任期を終え、3期目となる会頭に着任しました。2期目の3年間は、新型コロナウイルス感染症拡大への対応に追われ続けた感があります。そのため、3期目のお話をいただいた際には「チャンスがあるならば、コロナ禍でできなかったことにチャレンジしたい」との思いでお引き受けしました。まず取り組んだのが、商議所議員で構成する内部委員会の刷新です。三つの新委員会を設置しました。一つ目は、山口都市核エリア内の活性化施策を推進する「コンパクトシティ推進委員会」。二つ目は、商議所の役割を周知させながら新会員獲得の動きを加速させ、加えて会員のビジネスチャンス拡大を推進する「会員拡大交流委員会」。もう一つは、小郡都市核エリア内、とりわけJR新山口駅近郊(新山口エリア)のにぎわいにつながる施策を推進する「新山口まちおこし委員会」です。
商工会との連携で消費活性化
河野 さらに対外組織として、「(仮)商工会・商工会議所連携協議会」と「オール山口ブランド推進協議会」を設けます。山口県央商工会(旧阿知須・秋穂・阿東商工会)、徳地商工会、山口商議所(旧山口・小郡商議所)それぞれの管轄エリアは、1市5町が合併する前の行政区画そのままです。都市部の比率が高い山口商議所と、中山間地域の比率が高い各商工会とが手を結ぶことで、地域内の消費循環をより進めることができると考えます。持続可能な地域社会を構築するためにも、商工会と商議所との連携が求められます。両者の個性を尊重しつつ、コロナ禍や物価高に負けず、地域内の消費を活性化させられる仕組みをつくりたいです。最終的には、「オール山口」(山口市域全体)で農林水産加工品など様々な山口産品の商品化・ブランド化を推進。県央連携都市圏域(山口市、宇部市、萩市、防府市、美祢市、山陽小野田市、島根県津和野町)における経済循環を実現させることを目指します。今回、幅広い年齢層の新役員をお迎えすることができました。より会員事業者に寄り添った支援ができるものと期待しています。皆さんにはそれぞれ、各委員会の担当もしていただきます。これから3年間、どうぞよろしくお願いします。
アプリ「やまっち」を推進
河村 副会頭として2期目に入りました。最初の3年間を振り返りますと、会頭と同じく、新型コロナのために積極的な活動ができなかったというのが感想です。今期こそ、何か一つ形にしたいという思いは強いですね。担当委員会は、「コンパクトシティ推進委員会」(川口雄一郎委員長=末廣社長)です。そして、昨年秋にリリースした地域内経済循環アプリ「やまっち」のように、まだ始まったばかりの事業もあります。私は「(仮)やまっち推進委員会」の委員長も務めますが、3年後も皆さんに「このアプリ良いですね!」と使っていただけるように、着地点を見定めて動いていきます。役員の顔ぶれも変わり、人生の先輩と後輩、双方に囲まれる感じとなりました。ちょうど間に挟まって、良い刺激を受けられるのではないかと思っています。
新たに3人が新役員に
河野 続いて、今期新たに役員に就かれた3人の皆さんに、就任に当たっての抱負などを伺います。
椙山 地域に根差した金融機関の私どもは、地域に活力がなければ存続できません。“地域の皆さんが元気でいられるように”という意味で、山口商議所と萩山口信用金庫は一蓮托生(いちれんたくしょう)です。「会員拡大交流委員会」を宮川和也委員長(常盤社長)と担当させていただき、会員拡大、そして組織の活性化を図って参ります。楽しく、活気ある商議所づくりのお手伝いができたらと思っています。
臼渕 昨年10月まで「新山口エリア交流振興委員会」の委員長を3年間務めました。私は大阪の出身でもあり、この委員会では「地元出身でないからこそ気付いたことをいかに活用できるか」という観点から、新山口エリアの盛り上げを目指しました。この度、副会頭という重要な職をお預かりし、「新山口まちおこし委員会」を岩城考浩委員長(岩城酒舗社長)と担当させていただきます。まずは、これまでの3年間で培ってきたものを、しっかりと岩城委員長に引き継ぎたいです。山口県の陸の玄関口でもある新山口エリアが盛り上がれば、山口市、ひいては山口県全域にその好影響が波及するはずとの自覚を持ち、3年間務めて参ります。
田中 ここ数年は、新型コロナに右往左往させられましたが、昨年からはやっとコロナと共存し、経済を回していけるようなモードになってきました。そのような中でこの度、SDGs特任委員長役員を仰せつかりました。私は以前、山口商議所青年部に所属していました。当時、他の青年経済団体との交流も進める中で、「次世代を担う人たちの力を上手に連結させていかなければ、山口市の活力は段々と失われていくのでは」と感じました。まずは、山口市の「可能性がある」人たちと、とにかく話をして仲間になり、「面白いことを一緒にやろう!」との機運を高めたい。それが最初の役目だと考えています。
河野 過去2、3年を振り返りますと、新型コロナウイルスの影響で経済状況はがらりと変わりました。ご自身の業界を取り巻く経営環境が非常に厳しい方にも、今回役員に就いていただけたのは、大変ありがたいです。コロナによって企業が被るダメージと、必要な施策や経済対策についてよくご理解されてると思いますので、行政への要望活動に生かしましょう。必要なところに必要な予算措置が迅速かつ臨機応変にできるよう、商議所として動いていきたいです。
今期の展望は…
河野 では次に、今期の展望についてお話しします。まず、新設する「(仮)商工会・商工会議所連携協議会」は、SDGs特任委員長役員に担当していただきます。阿知須、秋穂、阿東、徳地の商工会と連携を取りながら、オール山口による経済活性化を図っていきます。もう一つの「オール山口ブランド推進協議会」は、私が担当します。また、中心市街地のコンパクトシティ化について、これまでは「中心市街地エリア創造委員会」で考察してきました。今後は「コンパクトシティ推進委員会」を通じて、湯田地域も含む山口都市核全域へと対象を広げます。同都市核内における動きや情報を共有し、必要に応じてハード、ソフト両面の事業を推進することで、人と人、そして経済的なつながりを創出していきます。
河村 「コンパクトシティ推進委員会」は、「コンパクト」で「機能的」で「集約」された住みやすい街づくりを目指します。仕事があってお金が回り、生活できる街でなければ、人は住んでくれません。必要なのは経済循環です。官民双方としっかり話し合い、どうすればよくなるか、一生懸命考えていきます。数年後には、山口市役所の新庁舎が供用開始されます。早間田交差点やパークロードなど、周辺地域にも好影響が出るはず。上手に活用していきたいですね。また、都市部に「集約」しますと、「周辺部が取り残されるのではないか」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。その疑念に対しては、SDGs特任委員長役員や新山口まちおこし委員会とも連携しつつ、しっかり向き合いたいと思います。
新山口エリアのソフト面充実を
河野 一方の新山口エリアには、一昨年KDDI維新ホールが完成。高稼働率をキープしており、その存在は市民・県民の間にも浸透してきました。とはいえ、地域のにぎわいやコミュニティづくりへの貢献はまだまだこれからとの印象もあります。そこで「新山口まちおこし委員会」を設置しました。従来の「新山口エリア交流振興委員会」とは少し趣向を変え、実際にイベントやシンポジウムも開催することで、にぎわい・コミュニティづくりにつなげようと思っています。
臼渕 KDDI維新ホールというハードが整い、これからはソフトの充実が求められます。「地域の人たちが地域のこと、ひいては『オール山口』について考え、『街を興していく』との発想を持つのが大事」だと認識し、岩城委員長とともに案を練っています。街おこしは、山口商議所単体では成しえません。新山口エリアの場合、JR西日本やKDDI維新ホールからの協力も必要。また、同エリアにおける様々な街づくり活動に取り組んでいる吉南青年会議所との連携も重要です。さらに、「オール山口」の考え方からしますと、山口県央商工会や徳地商工会との関係構築も求められます。これら各種団体との連携も図りながら、さらなる活性化に向けた展開を重ねていくことが必要だろうと思います。
河村 先日、東京から来山された歌手・アーティストの方を同ホールにご案内し、一緒に舞台裏などを見学しました。ステージは幅も奥行きも十分な広さを備え、駅からは至近距離。「これだけの施設は、東京にもあまりない」との感想を漏らされました。新山口エリアのポテンシャルの高さを感じた次第です。
臼渕 小郡地域に立地する事業所の山口商議所への加入率は、まだ低いように思います。新山口エリアにおける今後の取り組みが、同エリアにおける会員拡大にもつながるはず。他の委員会とも連携を取りながら、成果を上げていきたいです。
会員をフォローアップ
河野 次に、新設の「会員拡大交流委員会」についてお話しします。コロナ禍においても、山口商工会議所の会員事業所数は若干増加しています。この流れをより強固にするためにも、まだ私どもの活動内容をご存じない方々に広報し、会員増につながるような取り組みをしていきたいです。
椙山 組織を活性化させるには、その構成員を増やさなければなりません。市町村を例にとっても、人口が減少傾向のところは元気がありませんよね。山口市は、全域での人口は微減していますが、山口都市核や小郡都市核だけを見ると増加しています。この両都市核が対象エリアの山口商議所は、とても恵まれていると思います。近年、新型コロナウイルスの影響もあり、廃業される事業者も増えています。その一方で、創業、業態転換、新規事業創出など、前向きな動きをされる方も多いです。このような方々に入会してもらい、組織を構成できたら、山口商議所はまだまだ大丈夫です。とはいえ、入会者を増やすだけでは、活性化にはなりません。大事なのは、入会した人たちに、商議所会員になったメリットを認識してもらうこと。定期的な勉強会や懇親会の開催など、様々な交流を通じてコミュニケーションを図り、フォローアップすることが一番の近道なのだろうと思います。さらに、会員同士のビジネスマッチングを促進するような取り組みにもチャレンジし、様々な支援ツールのアピールもしっかりやっていきたいです。
河野 以前は年に一度「会員大会」を実施していました。今後は年4回程度、各回違うテーマで開催することも、検討してみましょう。
河村 商議所会員であることのメリットについては、私も議員になって初めて知ったことがたくさんありました。法律・税務面の支援を受けられ、人脈を広げることもできます。特に中・小規模事業者の方には、使いこなすことでその便利さを実感していただけると思います。
田中 青年部活動を支援することも、会員拡大につながります。青年部に入会するには、商議所の会員であることが求められます。したがって、青年部に入る若手経営者が増えれば増えるほど、山口商議所の会員が増加することにもなります。
「住み続けられるまちづくりを」
河野 SDGs特任委員長役員や、商工会・商工会議所連携協議会、オール山口ブランド推進協議会の設置は、完全新規の全国的にも珍しい取り組みだと思います。
田中 「商工会・商工会議所連携」ということを明文化して、ここまで踏み込んだ事業をするということ自体が、とても挑戦的。ただ集まってワイワイやるだけではなく、実利的な協議会に育てることが私の役目だと認識しています。役員を拝命してから、山口商工会議所として「持続可能な開発目標」(=SDGs)のどの項目に重点を置くべきかを考え、「住み続けられるまちづくりを」が第一だと結論付けました。南北に大きく広がり、それぞれの地域にそれぞれの特色がある山口市を「全国から訪れたい街」や「住みよい街」にするには、全体での共通認識を持つことが大事だと考えています。山口市には、個性的で魅力的な方が大勢いらっしゃいます。SDGs特任委員長役員として、山口市中に散らばっているそのような方々に呼び掛け、自分たちの街を住み続けられる街にするにはどうすればいいかを話し合うことから始め、出会った人たち同士をうまくつなげていきたいと思います。 個性的な事業や新たな商売を始めている方をご存じであれば、ぜひ紹介してほしいです。様々な方と連携し、充実した3年間にしていきたいです。
河村 経済循環については「やまっち」も起爆剤の一つとして活用したいと考えています。山口市全体の情報がまとまるツールにしたいですし、将来的には県央連携都市圏域の7市町も含めた広域のことも発信できるようにしたいと思っています。
河野 内部委員会を刷新し、各商工会と連携した対外的な組織やプロジェクトも立ち上げました。この3年間、ひとつひとつ着実に成果を残し、地域内経済の循環などでよりよいまちづくりに取り組んでいきましょう。