スカンジナビア半島北部のラップランドには、トナカイの群れとともにくらすサーメとよばれる人たちがいます。この本は、秋から冬のおわりにかけて彼らと一緒にすごした著者が、その経験をもとに書いた作品です。
トナカイの食べるこけは一年の間にごくわずかしか育ちません。そのため季節ごとに群れを移動させる必要があります。広い広い高原にちらばった何百頭ものトナカイを集めては、「ヨイク」を歌いながら次の草場へと導いていきます。それにあわせて人々も、住居を移動させていくのです。
太陽のほとんどのぼらない冬の間は、トナカイを持ち主のまきばで過ごさせ、人々は頑丈な木の家で生活します。
今はジープやラジオなども使っていますが、生活の基本は昔も今もほぼ変わりありません。赤の映える伝統的な衣装やトナカイ皮のくつなどからは、代々受け継がれてきたサーメの文化の厚みが感じられます。
やがて、太陽が空をオレンジ色にそめ春の到来をつげると、トナカイとともに大地を移動する新しいシーズンが再びはじまります。
ポプラ社
作・絵:ボディル・ハグブリンク
訳:山内 清子
ぶどうの木代表 中村 佳恵