山口市の2023年度一般会計当初予算案は、前年度比5.1%増の950億8000万円で、過去最大となった。同年度からの5年間を期間とする「第二次山口市総合計画後期基本計画」のスタートとも重なり、「『元気山口 新たな歩み』予算」とのキャッチコピーがつけられた。同計画に掲げられた三つの視点「農山村と都市が共存共栄するまちづくり」「今の市民生活を豊かにし、安心して元気に暮らせるまちづくり」「未来に向けたチャレンジを支えるまちづくり」の下、市役所本庁舎や湯田温泉パーク(仮称)といった施設整備とともに、若者の定住促進や子育て世代への支援などを盛り込んでいる。また、2022年度12月および3月の補正予算約3億8000万円と合わせた「16カ月予算」の総額は約954億6000万円で、これらは一体的に執行される。予算案は、2月17日から3月16日(木)までが会期の山口市議会に諮られる。
歳入・歳出の概要
[歳入]
「市税」は前年度当初比2.3%(約6億1000万円)増の約277億円を見込んでいる。景気回復による法人市民税約6000万円の増収や、新増築家屋の増加などにより固定資産税も約4億9000万円の増収に。また、国からの「地方交付税」は、5.3%(約9億5000万円)減の約169億4000万円の見込み。財源不足を補うため、貯金に当たる財政調整基金から18億円を取り崩すなどする「繰入金」は2.6%(約1億3000万円)増の約49億8000万円で、市の借金に当たる「市債」は、36.1%(約33億8000万円)増の約127億3000万円。2023年度末の財政調整基金の残高は、13億5800万円にまで減る見込みだ。
[歳出]
「人件費」は、給与改定に伴い給与は約1億3000万円増加するものの、退職者の減少により退職手当が減り、4.5%(約7億3000万円)減の約154億円に。私立保育園の定員拡大に伴う運営費増加などから「扶助費」は1.3%(約2億6000万円)増の約197億7000万円になった。また「投資的経費」は、新本庁舎や湯田温泉パーク(仮称)、消防本部等の建設などで39.3%(約50億5000万円)増の約178億7000万円に膨らんだ。「物件費」は、0.5%(8000万円)減の約145億2000万円。
主な事業
[子ども・子育て全力応援のまちづくり]
①子育てなら山口
- やまぐち母子健康サポートセンターにおける初期相談窓口のワンストップ化・相談支援体制の充実(4353万円)
- 出産・子育て応援給付金給付事業(1億4660万円)
- 学校給食等の物価高騰分の公費負担(9926万円)
- 保育園(認可保育施設)等のさらなる定員拡大(63億7521万円)
- (障がいの有無に関係なく遊べる)インクルーシブ遊具の整備への支援(1029万円)
- 放課後児童クラブの待機児童解消に向けた取り組み(11億5076万円)
②教育なら山口
- 「やまぐち子ども未来型学習プロジェクト」の実施(1469万円の一部)文部科学大臣賞を受賞した「360°図鑑」の取り組みを全市立小に拡大
- (タブレット端末や電子黒板等)ICTを活用した学びの充実(3億8947万円)
- 英語教育の推進(4603万円)
- コミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育の推進(100万円)
- 市立中学校の部活動の地域移行に向けた取り組みの推進(3120万円の一部)
[若者活躍と雇用創出の環境づくり]
①若者活躍のまちづくり
- 若者の遊び場の充実に向けた検討(9490万円の一部)アミューズメント施設等の立地促進に向けた情報収集や立地可能性に関する調査を実施
- 若者交流・出会いの場の創出への支援(100万円)
- 大学等の新卒者雇用への支援(2000万円)
②多様な雇用の場の創出
- スマート農業推進事業(6920万円)
- 農林水産業の新規就業者支援(6502万円)
- 道の駅「仁保の郷」の機能強化(7854万円)
- 道の駅「あいお」移転整備(1150万円)
- 光熱費等の低減に向けた省エネ機器導入への支援(5000万円)
- 安心快適住まいる助成事業(1億8400万円)
- 起業創業支援事業(1428万円)
- 大内塗後継者の育成支援(1119万円)
- 企業誘致の推進(3億3589万円)
③働きやすい職場環境づくりと未来を担う人材育成
- デジタル技術活用・人材育成支援事業(7209万円)
- 働く女性の活躍応援事業(1010万円)
[人生100年時代の元気活躍のまちづくり]
①健康都市づくりの推進
- 済生会山口総合病院の建て替え支援(1億1380万円)
- 徳地地域における医療提供体制の充実(1745万円)
②元気活躍を支える地域福祉の推進
- 「やまぐち『まちの福祉相談室』」による包括的な相談支援体制の充実(4960万円)
- 認知症対策の推進(3136万円)
③学びが充実し、生涯にわたって活躍できるまちづくり
- 大学や企業等との連携による学習機会の創出(884万円)
- 地域におけるデジタル活用の支援(1億3062万円の一部)▽日本一"本"を読むまちづくり(1億9844万円)
[21地域づくりと農山村活性化]
①個性と安心の21地域づくり
- 地域づくり交付金(1億9970万円)
- 法定外公共物整備助成事業(7276万円)
- 道路維持活動助成事業(2646万円)
- 湯田地域交流センターの増改築工事(2億4505万円)
- 平川地域交流センター建設事業(5450万円)
- 大内地域交流センター建設事業(100万円)
- 小鯖地域交流センターの機能の強化・複合化に向けた検討(100万円)
- 阿東地域交流センター篠生分館建設事業(2億2817万円)
- 地域防災活動、地域防災を支える消防団の活動への支援(7661万円の一部)
- (除雪基地整備等)阿東地域の豪雪対応(203万円)
- 地域の特性に応じた公共交通ネットワークの再構築(5億5238万円)
②農山村エリアの地域活性化
- 農山村にぎわい計画の策定(800万円)
- 地域おこし協力隊等の外部人材の活用(9500万円)
- 農山村エリアにおける起業創業の支援(2650万円)
- 重源の郷体験交流公園のリニューアル整備(6億4923万円)
- 空き家利活用事業(951万円)
- 関係人口創出促進事業(2328万円)
[元気な県都づくり]
①広域県央中核都市づくり
- 新本庁舎の整備(42億607万円)
- 第3期山口市中心市街地活性化基本計画の推進(2327万円)
- 歩きたくなるまちなかの形成(2375万円)
- 中心市街地まちなみの魅力向上支援事業(6700万円)
- 中央消防署整備事業(2100万円)
- 市民会館の老朽化対応(1313万円)
- 国宝瑠璃光寺五重塔の檜皮葺屋根葺き替えへの支援(9610万円の一部)
- (仮称)湯田温泉パークの整備推進(11億3045万円)
- 中央公園等を活用したイベント開催支援(2000万円)
- 新山口駅周辺地区整備事業(2億4911万円)
- 国道9号や国道2号の早期事業化等に向けた取り組み(2100万円)
- JR山口線の利用促進(3719万円の一部)
- 県農業試験場等の跡地利活用の検討(3000万円)
- さらなる居住誘導に向けた用途地域等・都市計画道路の見直し検討(2000万円)
②文化・観光・スポーツ資源を活用した交流創出
- 山口情報芸術センター(YCAM)20周年記念事業の実施(4556万円)
- 芸術家育成支援事業(281万円)
- 広域観光連携の強化(3284万円)
- インバウンド観光誘客推進事業(2109万円)
- 武道館の整備推進(880万円)
- 我がまちスポーツ推進事業(1115万円)
[持続可能な未来都市づくり]
①未来を担う人材育成(HX:ヒューマントランスインフォメーション)~「学都山口」のまちづくり連携
- 産学官金連携のもとでの人材育成(600万円)
- 職員の資質向上に向けた取り組み(492万円)
②便利で快適な暮らしに向けたデジタル技術の活用(DX:デジタルトランスフォーメーション)
- データ連携基盤の活用(9490万円の一部)
- マイナンバーカードの普及促進(2億8971万円)
③暮らしの質の向上と地域経済活性化に向けた地域脱炭素の推進(GX:グリーントランスフォーメーション)
- 脱炭素先行地域の取り組み推進(42億9979万円の一部)
- 地球温暖化防止普及啓発事業(836万円)
- バイオマスエネルギーの活用(2714万円の一部)