2023年ももう三か月が過ぎてしまいましたね。先日私は七十六歳になったので、遅ればせながら気合を入れるために今年の目標を掲げた。『いざ、闘わん、奮い立て』。これは、「兜町(しま)の男・清水一行と日本経済の80年」(黒木亮著)の帯の惹句である。
足腰が痛い、目が霞む、もの忘れが激しい、不安を先取りして怯える等々。肉体、精神ともに軟弱な私。その私の血液を熱く燃えさせるには前述の強い目標がいるのだ。この言葉を口にすると、興奮し、手足の先まで血が勢いよく流れるのを感じる。奮い立て!
読めば奮い立つ作家は、第二次大戦前後を生き抜いた人が多い。彼等が書いた小説もだが、自伝やエッセイに強く惹かれる。その苦労の描写、それを撥ね返す努力の凄さは私に熱い息を吹き込む。松本清張・本多靖春・開高健・池波正太郎等々。
清水一行(1931~2010)の経済小説は、私に日本というものの仕組みを教えてくれた。「小説兜町」が出版されたのが昭和41年。私が社会に出た年だ。無知な私が社会のパンチを食らった時だ。彼の次々に出される小説を読んで、心は震えたが、現実に奮い立つことはなかった。今度こそ、少しは奮い立たねば人生は終わる、と思い目標にしたが・・・。いざ、いざ、光射す方へ。