2022年3月15日、徳佐八幡宮(山口市阿東徳佐中)のシダレザクラ並木が「徳佐(サクラ)」として国の名勝に指定された。そのことを受けて、地元住民で組織する「しだれ桜保存会」は、「より多くの方々に、(夜桜など)さまざまなスタイルで桜並木を楽しんでほしい」と、ライトアップ設備の整備に取り組み。そのお披露目となる「徳佐しだれ桜ライトアップフェスタ~音楽と舞の夕べ」が、3月29日(水)午後5時から8時まで、同八幡宮参道などを会場に開かれる。同実行委員会(瀬川和久会長)の主催。
「フェスタ」は3部構成。第1部と第2部の会場は同八幡宮近くの阿東東中学校体育館で、第3部の舞台は参道だ。
第1部は、山口市出身のシンガーソングライター・ちひろによる歌唱「ふるさとの風~山口市民の歌」で幕が開き、徳佐小学校5・6年児童による合奏、阿東東中学校生徒による伝統芸能「はやしだ」、山口高校徳佐分校吹奏楽部の演奏が披露される。
5時40分からの第2部は、山口県ふるさと大使も務める美祢市出身の歌手、入山アキ子による歌謡ショー。
会場を移しての第3部は、6時40分にスタートする。「ライト点灯式」では、阿東産の米を使って特別に醸造された日本酒「獺祭」で鏡開きが行われ、ライトアップされたシダレザクラ並木が初めて披露される。その後、よさこいの演舞(出演:あとう桜舞、長州青組、つわの風雅蒼淙、西京華伝隊)、阿東嘉年出身のシンガーソングライターQzouによる弾き語りライブなどが行われる。
当日は、うどん、おでん、豚串、焼き鳥、から揚げ、山賊焼き、わらびもち、ドーナツ、生ビール、日本酒などを販売する屋台やキッチンカーも出店する。
「鏡開き時の日本酒の振る舞いなど酒類の提供・販売もあるため、できるだけ公共交通機関を利用して」と主催者は呼びかけている。当日は、4時35分徳佐駅着のJR山口線の列車を利用して来場すれば、駅名表示板を小型化した記念キーホルダーがもらえ、ぜんざい・甘酒・さくら茶の無料振る舞いが受けられる。さらに、5時11分徳佐駅着の特急「スーパーおき」の利用者には、前記の内容に加えて、徳佐リンゴを使った「スイーツBOX」(1200円相当)もプレゼントされる。いずれも先着順で、無くなり次第終了となる。
また、ライトアップされる期間は、この日から4月9日(日)まで。点灯時間は、日没から午後10時だ。
徳佐八幡宮は、平安時代末期の1182年に、周防大内氏の当主・大内満盛によって大分県の宇佐八幡宮から徳佐丸山に勧請(かんじょう)、建立された。火災により小南に遷座したが、1679年に2度目の火災で社殿が全焼。翌年、藩主・毛利綱広によって現在地に遷座された。
参道の桜は、1825年、当時庄屋だった椿正直が主導し、エドヒガンとシダレザクラの苗木を大阪から取り寄せて植栽されたのが始まりとされる。大正期には名所としてその名が知れ渡り、1934年には「徳佐(櫻)」として国の名勝(第2類)に指定された。戦時中に一部が荒廃し、1956年には法律改正により名勝指定も解除。だが、地元有志によって、従来の種のみならずソメイヨシノ、里桜、八重桜などを捕植するなどの努力を重ねたことで、1973年に旧阿東町の天然記念物に指定された。さらに「国指定名勝」の名を取り戻そうと、1991年に地域住民らでつくる「しだれ桜保存会」が発足。エドヒガンやシダレザクラ系統の補植や苗の育成、害虫駆除、剪定(せんてい)などを行い、往時の姿への復旧が図られた。そのかいあって、2021年12月に国の文化審議会が文部科学省に答申し、2022年3月15日に名勝指定を受けた。山口県内で国の名勝指定を受けたのは、2000年の常徳寺庭園以来で、計13件になった。
参道の長さは約370メートルで、その両脇に52本ずつ、計104本の桜が植わっている。そのうちの77本がシダレザクラの系統で、シダレザクラを中心とする並木は全国的にも珍しい。
「地元の宝、山口の宝、日本の宝ともいえる徳佐のシダレザクラ。ライトアップイベントを開催することによって、地域の皆と一緒に国指定名勝を祝うことができる。さらに、交流人口の増加、知名度のアップと地域経済の活性化につながれば」と、主催する同実行委員会。