映画「戦争と女の顔」(2019年、ロシア)が、4月1日(土)に山口県内初上映される。会場は山口県教育会館(山口市大手町2)で、上映時間は午前10時半、午後2時、7時からの3回。西京シネクラブの主催。
ベラルーシのノーベル賞作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの著書「戦争は女の顔をしていない」を原案に、第2次世界大戦に従軍した女性兵の戦後の苦しみを描いており、第72回カンヌ国際映画祭(2019年)「ある視点」部門で国際映画批評家連盟賞と監督賞をダブル受賞。また、第92回アカデミー賞(2020年)国際長編映画賞ではロシア代表として最終選考に残り、世界中で30を超える映画賞を受賞した。映画好きで知られるバラク・オバマ元米国大統領による2020年のお気に入り映画にも選ばれている。
1945年、終戦直後の荒廃したレニングラード(現サンクトペテルブルク)が舞台。多くの傷病軍人が収容された病院で看護師として働くイーヤは、元女性兵士。戦争によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えながら、戦友マーシャの息子・パーシュカを育てていた。ある日イーヤは、PTSDの発作のせいで、パーシュカを窒息死させてしまう。そこにマーシャが戦地から帰還、息子の死にがく然とする。イーヤとマーシャの2人は戦争によってそれぞれが負った心身の傷に悩まされながら、自分たちの生活を再建しようとするが―。
監督のカンテミール・バラーゴフは1991年、ロシアに属するカバルダ・バルカル共和国に生まれた。この映画を手掛けた時は20代で、ロシアの若い世代に戦争の実態を知ってほしいという思いから制作したという。主演はともに新人のビクトリア・ミロシニチェンコとバシリサ・ペレリギナが務めた。
原案の著者は、ウクライナ人の母とベラルーシ人の父のもと、ウクライナで生まれ育った。もともと地方紙の記者だった彼女は、戦争記録が「男の言葉」だけだったことに疑問を持っていた。そこで、独ソ戦に従軍した女性兵500人以上の証言を集め、女性目線の戦争体験記を生々しくつづったデビュー作が「戦争は女の顔をしていない」(1985年)だ。完成から2年間は、「国家に対する中傷」として、出版禁止になっていたが、出版されるや否や、200万部を超えるベストセラーになったという。さらに、「アフガン帰還兵の証言」(1988年)、「チェルノブイリの祈り」(1997年)などを出版し、2015年にジャーナリストとして初めてノーベル文学賞を受賞した。
チケットは当日会場で販売。料金は、一般1800円、19歳から25歳まで1000円、18歳以下800円。電話予約(TEL083-928-2688)すれば、一般料金のみ1500円に割引される。
「日本では2022年7月が初上映で、県内では初となる。原案の書籍は、NHKの『100分de名著』(Eテレ)の『終戦から77年を迎える』企画で2021年8月に紹介もされた。戦闘シーンだけではわからない苦しみが描かれている」と西京シネクラブ。