ある村に「はくしょん」という名まえの若者がいました。あるとき、おっかあの大きな大きなくしゃみにふきとばされ、落ちたところは長者の屋敷の庭。その家の娘は、生まれたときから耳がきこえず口もきけず、そのため滅多に笑うことがありませんでしたが、この若者がくしゃみを連発する様子を見て大笑い。さらには娘も、大きなくしゃみをしたひょうしに、耳がきこえるようになりました。
この本には、表題作のほか、しゃっくり、いびき、おなら、あくびなど、とめたくてもとめようのない生理現象に悩まされる主人公が登場し、最後にはめでたし、めでたしで終わるおはなしが全部で五話入っています。
西風のときは「ひゃく」、北風になると「ひっく」と風向きによって音のかわるしゃっくりをするとめ吉のおはなしや、音はホーホケキョ、かおりは梅の香のするおならを出す「梅の木村のおならじいさん」など、どれも底ぬけに明るく、声に出して読むと一段とおもしろさが増します。
昔話風の挿絵とともにたっぷり楽しめる一冊です。
福音館書店
作:松岡 享子
画:寺島 龍一
ぶどうの木代表 中村 佳恵