杖坂の集落から標高差170メートルを登り切ると、石州街道の最高地点、標高370メートルの大峠に到る。ここは周防・長門両国を分かつ国境であり、峠に立つ高さ2メートル余りの花崗岩の石碑には、「南周防國吉敷郡」「北長門國阿武郡」と記されている。但し、長州藩時代にはこの峠北側の篠目地区も当時の行政区「山口宰判」に属していたことに注意されたい。
また文化八年(1811)に測量の為に峠を通過した伊能忠敬は「杖坂村大峠人家一軒あり」と記録しており、茶店があったと思われる。残念ながら峠からの展望は効かない。冬場になれば、この峠を境に天候が大きく変わることはよく知られている。その意味でも国境と呼ばれるに相応しいと言えるだろう。
文・イラスト=古谷眞之助