「『日本最古』といわれる『写し四国』」の「秋穂八十八カ所霊場」で、5月9日(火)と10日(水)に「お大師まいり」がある。これは、弘法大師(空海)の命日に当たる旧暦の3月21日と前日の20日に、地域の人たちが巡礼者に対して飲み物や食べ物のおもてなしをする毎年恒例の行事。当日は、各札所における「お接待」に加え、山口観光コンベンション協会秋穂支部(TEL083-984-3741)などによるさまざまな取り組みもされる。
拠点となるのは、両日午前9時から午後4時まで「案内所」も設けられる秋穂地域交流センター(山口市秋穂東)だ。道案内に加え、オリジナル巾着袋に80枚の10円玉が収められた「おさい銭用小銭」(1000円)等巡礼グッズの販売もされる。
そして、コロナ禍で中止されていた「スタンプラリー」が今年は"復活"。台紙は案内所で配布され、各札所に置かれたスタンプを各自で押印する。以前のような景品の贈呈はなく、純粋にスタンプ集めだけを楽しむ催しとなっている。
また、同センターをスタート・ゴールに、参加者が一緒に徒歩で巡る「ツーデーウォーク」も開催。1日目は同センター北部を巡る「中野~天田コース」で、2日目は同じく南部を巡る「下村~浦方面コース」。どちらも約5キロの行程で、所要は約3時間。事前申し込みは不要で、参加希望者は出発時間の午前9時以前に同センターに集合する。
さらに同所には、霊場巡りが体力的に困難な人たちに向け、全札所の敷地内の土砂を88の袋に詰めて並べ、その上を足で踏む「お砂踏み」体験コーナーも設置。この上を歩けば、八十八カ所を徒歩で巡礼したのと同じ功徳が得られるという。
各霊場を巡るのに必要不可欠なガイドマップ「巡礼手帖」は、案内所や札所の各お寺、秋穂地域内の商店や行政施設、道の駅(あいお・きららあじす)等に設置してある。内容は、札所所在地一覧、巡礼の作法、案内図、おすすめコースの紹介などだ。
「近年は高齢化が進み、お茶やお菓子を振る舞う『お接待』をする側も少なくなっている。この文化を継承していくためにも多くの人に来場してもらい、若い世代に伝えていきたい」と、同協会秋穂支部。
例えば、41番札所「大師堂」(秋穂東)の現状を聞くと、現世話人会は前の世話人会の解散を受けて2011年に誕生。発足当初は15人のメンバーだったが、現在は13人で、高齢化によりまもなく10人を切るという。後継者を探すものの、「平日開催の催しでは参加できない」と断られるケースが大半。「お接待」においても、2017年までは前日に餅つきをし、紅白2個を1500セット袋詰めにしていたが、体力的に難しくなり、業者に委託するようになった。他にも前日には接待品(お菓子や飲み物)の購入、お堂の清掃、祭壇の仕上げ、テント、机、イス、仮設トイレの準備などを実施。当日朝は午前8時に集合して、「灯明係」「お接待係」「交通整理係」をそれぞれ担当。終了後はすべてを元に戻して解散するなど、やるべきことは多い。
その分、参拝した人たちからは札所の人たちに対して「どの札所でもあたたかいおもてなしを受け、とてもうれしく思った。おかげで頑張って歩くことができた」「感動の一言。皆さんに幸あらんことを」「事前の接待準備大変だと思う。来年もまた参加したい」など感謝する声が毎年寄せられているという。
秋穂八十八カ所霊場は、1783(天明3)に遍明院の住職だった性海法印が四国八十八カ所霊場の「御符」と「御砂」を持ち帰り、秋穂に霊域を定めて札所を設けたのが始まり。今年でちょうど240年になる。四国八十八カ所の写し霊場「写し四国」としては、国内最古だと伝えられている。