おばあちゃんとかあさんとわたし。三人ぐらしのわたしたちは一年前に火事にあい、家中のものがみんな焼けてしまいました。
小さなアパートに引越して、近所の人に支えてもらいながら何とか暮らしていけるようになりましたが、そこには、一日中ウエイトレスの仕事をしてくたびれはてたかあさんがゆっくり休めるいすがありません。
そこで三人は、世界一すてきないすを買うために、大きなガラスのびんに小銭をためることにしました。
かあさんがお客さんからもらったチップ。おばあちゃんが安売り品を買ったときにあまったお金。わたしが時々もらうおこづかい。
毎回入れることのできるお金はほんのわずかでしたが、とうとう、びんの口からあふれるほどの小銭をためることができました。
家具屋さんを四軒まわってやっと出会えたのがこのいすだったのです。
バラもようのビロード地におおわれたふわふわのいす。三人一緒にすわっても大丈夫なほど大きないす。
小さなアパートにむかえいれられたこのいすは、お店におかれていたときよりもずっと輝いてみえます。
あかね書房
作・絵:ベラ B.ウィリアムズ
訳:佐野 洋子
ぶどうの木代表 中村 佳恵