この季節になると、庭の花や名も知らぬ草たちは元気にぐんぐん成長する。そう、ぐんぐん音を立てて伸びる。ほっておけば我が家は蔓性植物によって絡め取られる。毎年、悩みながら彼らを抜き、鋏で切る。生命を絶つ。
-ここでなく広い草原に生えたなら、その緑の中に紛れて一生が終われるのに。英国湖水地方のジェームズ・リーバンクス氏の農場に生えれば、羊や牛や豚の餌になり得ただろうに-と呟く。さっきまで、『羊飼いの想い(イギリス湖水地方のこれまでとこれから)』を読んでいたのだ。
土地と自然と動物と共存する持続可能な農業とはどういうものなのか。人間と自然との境界はどこか。彼等は模索する。
広大な湖水地方の農場とは比べ物にならないのに、著者に感化され私も狭い庭で考える。庭と自然との境界はどこだ。和解地点は?
一つわかったことは(あまり本題とは関係ないが)、我が家の西洋タンポポ(日本タンポポ? 調べたがわからない)は朝寝坊ということだ。私が草取りを始めるのは五時半。うす暗い。ツツジは咲いているのにタンポポは花を閉じている。朝日が当たると開く。朝寝坊の花だ。隣家の瞳ちゃんはランドセルしょって出かけたのに。もうひとふんばり草取りをしよう。