光沢のあるこげ茶色のがっしりとしたからだからエネルギーを発散させ、子どもたちの心を魅きつけるかぶとむし。
かぶとむしがこの堂々とした姿でいられるのは夏の間だけ。他の虫たちが元気に動き回っている春の林を探しても、その姿を見つけることはできません。
「かぶとむしは どこに いるのだろう?」
いたいた、積もった落葉の下。冬の間、かぶとむしの幼虫は、腐葉土をもりもり食べながら大きくなっていくのです。
夏のはじめになると土の中にもぐり、たまご型の部屋をつくります。
その部屋の中で約一週間かけてさなぎへと変化し、さらに一ヶ月を経てようやく成虫となって土から出てくるのです。
からだが変化していく様子を描いた見開き四ページを見ていると、一つの生命が時間をかけてダイナミックに形を変えていくことの不思議を感じます。
成虫は林をとび回り、交尾する相手を見つけると、新しい生命を小さなたまごに託します。
そして、夏のおわりには短い一生を終えるのです。
福音館書店
作:松岡 達英
ぶどうの木代表 中村 佳恵