こんなに暑くなると、なにをするにもだらしい。生きるためには沢山雑多なことをしなくてはならない。嫌だ、とはぶてる。ぶすける。
夕食は何を食べようか? テレビを見ていたら、男優が幸せな顔してカレーを食べていた。カレーだ。暑くて食欲もないけれど、カレーなら食べられる。食べなければ益々精神が滅入る。カレーの香辛料は元気にしてくれる。
元気ならコブラだ、という単純な発想で、壺の中からコブラが鎌首をもたげて現れるコブラ使いの妙技を思い出した。一度マレーシアで見たのだ。最前列で見ていた私とコブラと目があった。殺気を放ち元気だった。
カレーを作るには、材料を買いに行かねばならない。家にはじゃが芋と鶏肉があるだけだ。人参とカレーのルーと玉ねぎは必要だ。炎天下外に出たくないので、台所の戸棚を探した。隅の方に使いかけのカレーのルーが見つかった。端が乾燥していたが、大丈夫。江戸時代の長屋の暮らしでは、ご近所さんに、人参半分、玉ねぎ一個を借りに行くのだろうけれど、我が家の周囲は空き家だらけ。長屋の井戸を真ん中にした姦しい暮らしがうらやましくなった。
鶏肉とじゃが芋だけのカレーの完成。コブラの目を思いながら完食。元気が出た。夏なんてちょろいものさ。