肉を焼いても魚を焼いても、その横にはキャべツの千切りを添える。キャベツの千切りはとても重宝だ。キャベツを千切りするのは面倒で難しい。まず、包丁を砥石で研ぐ。研がねば切れが鈍く、細い千切りのキャベツができない。練習を重ねた。
ある日、バス停で帰宅するためにバスを待っていたら、キャベツを買うのを忘れたのに気付いた。今日の夕食はコロッケなのでキャベツの千切りはどうしてもいる。バス停の横にコンビニがあった。もしかしたらキャベツがあるかもしれない。重いキャベツはなかったが、キャベツの千切りが透明な袋に入って棚に並んでいた。買うのに少し抵抗があったが、どうしてもいるのだ。買って帰った。
虜になった。ふんわりとして美味しい。私はこのように細かに切れない。いくらでも食べられる。何度も買った。自分で作らなくなった。
数か月後、キャベツの千切り用の器具を買った。サッサとキャベツを器具の上で大根下ろしをするように動かすと、瞬時に細い細いキャベツの山ができる。最高だ。
ある日、久しぶりに手でキャベツを刻んでみたら太く連なってしまった。料理下手の私の少ない能力であったキャベツの千切りの技を失っていた。苦笑しながら太いそれを食べた。