エミリーとジャック姉弟の家には、古くて大きなかしの木がありました。二人はそれを海賊船に見立てて遊ぶのが大好きでした。
ある朝エミリーが目をさますと、窓の外に海が広がり、かしの木のあったところには本物の海賊船がうかんでいたのです。
二人はその船に乗り、大航海へと出発。でも遠くの空には不穏な黒雲が広がっています。
そのうちエミリーは、水平線が輝いているのに気付きます。そこを目ざして行くうちに、やがて大嵐。大波にもまれながらも船を進め、この世のはしにたどりつき、そこで見つけたのは、煌々と光を放つ金のどんぐりだったのです。
二人はどんぐりを手に意気揚々と家に帰ります。が、そこで目にしたのは、落雷で地面に倒れたかしの木の姿でした。
金のどんぐりをめざす大航海は、この木が二人に見せてくれた最後のプレゼントだったのでしょう。
二人は自分たちのかしの木がはえていたところに金のどんぐりを植えました。「また おおきな おおきな かしの木に なるように」との願いをこめて。
徳間書店
作:イアン・ベック
訳:笹山 裕子
ぶどうの木代表 中村 佳恵