あっ、目の前でバスが行ってしまった。一歩遅かった。次のバスまで三十分待たねばならない。バス停にはベンチはあるが、この日は三十五度の猛暑。道路の脇のベンチは燃えている。近くのコンビニに入り涼みながら待とう。店はキンキンに冷えていて、身体の隅々まで生き返る。極楽、極楽。処々問題はあるが文明はいいなあ。何も買わないでぼーっと隅に立っているのも気が引ける。涼み代に何か買おう。アイスクリームがあるではないか。私の移動は徒歩とバスだから、アイスクリームを買って家に帰ることはできない。溶けてしまう。アイスを食べるのは私には難しいことなのだ。
店員さんに「アイスを買ってここで食べていいですか」と訊いた。「いいですよ」。カップのアイスを買って壁にもたれて食べようとしたら、店員さんが「間違ってました。店内の飲食はダメです」と言った。仕方がないのでアイスを持ったままバス停のベンチに座った。お尻が燃えた。日傘の中に身を屈めアイスを一口。ああ冷たい。アイスはどこで食べても美味しい。目の前を車が行く。白髪の女性が独りベンチでアイスを食べている図はどう見えるだろうか。
いいさ、地球滅亡まで後九十秒というではないか。アイスをもう一つ食べようかしら。