「山口でなかなか上映される機会のない良質な単館系新作映画を、自分たちの手で上映・観賞する」ことを目的に活動している「西京シネクラブ」が、1990年10月の創立から33年を迎える。そこで、創立33周年記念例会(上映会)を、9月30日(土)と翌10月1日(日)に山口県教育会館(山口市大手町2)で開催。今回は、「ウィ、シェフ!」(2022年、フランス)を4回、「世界のはしっこ、ちいさな教室」(2021年、フランス)を2回、「オルガの翼」(2021年、フランス・スイス・ウクライナ)を2回上映する。
ウィ、シェフ!
一流レストランのスーシェフ(副料理長)として働くカティの夢は、いつか自分のレストランを開くこと。だが、シェフと大ゲンカして店を飛び出し、ようやく見つけた職場は移民の少年たちが暮らす自立支援施設だった。質より量、まともな食材も器材すらないため不満をぶつけるカティに、施設長のロレンゾは少年たちを調理アシスタントにするアイデアを提案。フランス語がちょっと苦手な少年たちと、天涯孤独で人づきあいが苦手なカティ。料理が繋げた絆は少年たちの将来だけでなく、一匹狼だったカティの世界も変えてゆく…。実在のシェフ、カトリーヌ・グロージャンをモデルに、フランスが抱える深刻な問題を社会派コメディとして発表してきたルイ=ジュリアン・プティがメガホンを取った。フランスを代表する女優オドレイ・ラミーと「最強のふたり」などのフランソワ・クリュゼに加え、オーディションで選ばれた40人の実際の移民の少年たちが出演した。上映は、9月30日が午前10時半、午後1時半、7時からで、10月1日は午後3時半から。
世界のはしっこ、ちいさな教室
日本でも大ヒットした「世界の果ての通学路」(2012年)の製作チームが、世界の果ての3人の先生を取り上げたドキュメンタリー映画。識字率アップが国家の使命である西アフリカ・ブルキナファソの新人教師であり2人の子どもの母でもあるサンドリーヌ、バングラデシュ北部のボートスクールで子どもや女性の権利を守るために粘り強く闘う若きフェミニストのタスリマ、広大なシベリアに暮らす現役の遊牧民でありエヴェンキ族の伝統の消滅を危惧するスヴェトラーナ。「子どもたちに広い世界を知ってほしい」という情熱を胸に、様々な困難に直面しながらも、信じる道を進み続ける姿を、スクリーンに映し出す。上映は、9月30日が午後4時からで、10月1日は午後1時半から。
オルガの翼
2013年、ユーロマイダン革命直前のキーウ。15歳の体操選手オルガは、ヤヌコーヴィチ政権の汚職を追及するジャーナリストの母が運転する車で帰宅中、何者かが運転する車に激しく追突される。2人は何とか逃げ切るが、割れたガラス片がオルガの腕に突き刺さっていた。身の安全のため、亡き父の故郷スイスに移り、現地のナショナル・チームで欧州選手権を目指すこととなったが、SNSを通じて革命に揺れる故郷の様子を目の当たりにする。大会出場のためには、彼女もウクライナの市民権を手放さねばならない。政情が刻々と変化し、オルガの心は大きく揺れる。彼女が最後に下した決断とは――。マイダン革命の映像は、全て実際にデモ参加者がスマートフォンで撮影した映像を使用しており、第74回カンヌ国際映画祭SACD賞(2021年)、第25回スイス・フィルム・アワード最優秀作品賞(2022年)、ブリュッセル国際映画祭2021観客賞/BeTV賞を受賞した。上映は、10月1日午前10時半からと午後6時半から。
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電話予約(TEL083-928-2688)で申し込む前売り券の料金は、それぞれ一般1500円。当日券は、一般1800円、19歳から25歳までが1000円、18歳以下800円。
主催する同会の大久保雅子代表は、「33年を記念して、未来を生み出す『子ども』をテーマにした3作品を上映する。西京シネクラブの会員は、1998年頃には約400人いたが、現在は120人にまで減少。なんとか資金を工面しながら上映を続けているが、未来を生み出すためにも、ぜひ観賞してもらえたら」と話している。