国宝・瑠璃光寺五重塔(山口市香山町7)は現在、70年ぶりとなる檜皮(ひわだ)葺き屋根全面修復工事や木部修理作業が実施されている。工事完了は2026年3月の予定で、工事終盤の2025年9月ごろまで、その姿は囲いに覆われて見ることができない。山口市は、その間にも観光客らに楽しんでもらおうと、「昇華-shouka-大内文化」と名付けた取り組みを実施している。
まず、五重塔を囲む外壁をデザインシートで覆った。テーマは「大内氏の思想を纏(まと)う五重塔」。五重塔の姿を白抜きで表し、訪れた人にその裏に潜む姿を自由にイメージしてもらおうと考えた。そしてその周囲には、鮮やかな色を配色。五重塔を建立した大内氏の「武家としての荒々しさ」「文化人としての繊細さ」「多様な文化を柔軟に取り入れた思想」などを表現したという。設置は2025年10月まで。
また、そのデザインシートにはAR(拡張現実)動画が仕込まれている。専用スマートフォンアプリ「COCOAR」を立ち上げてシートにかざすと、山口県出身の切絵アートクリエーターAtsuomi(中村敦臣)氏による、五重塔の切絵作品「原始と行き先『Source and Destination』~瑠璃光寺五重塔」を制作する過程を、タイムラプス(コマ送り)動画で楽しむことができる。実際の作品は瑠璃光寺本堂に飾ってあり、見学も可能だ。期間は来年3月まで。
そして、工事用仮囲いには、イラストで大内氏の歴史や五重塔を紹介する「西国一の御屋形様-大内氏と五重塔がわかる『時代絵巻』」が設置されている。「西国一の御屋形様 大内氏がわかる本」など、大内氏に関する作品を多く手掛けてきたイラストレーターtaeco(たえこ)氏による親しみやすいイラストを用いて、五重塔と大内氏24代弘世から32代義長までを紹介。サイズは、高さ2メートル・全長27メートルだ。設置は来年3月まで。
時代絵巻の近くには、「大内氏の栄華を表す花のモニュメント」が展示されている。大内氏の家紋・大内菱をモチーフとした竹製モニュメントに様々な花木を配置し、大内氏の歴史や文化を3期にわたり表現する。現在置かれている第1期のテーマは「大陸との交流で花開いた大内氏」。国際色の豊かさを表現するため、マダガスカル、ベトナム、中国、韓国、日本など、幅広い原産地の植物を採用した。第2期は11月上旬、第3期は来年2月中旬の設置が予定されている。展示は来年3月まで。
モニュメント「大陸との交流で花開いた大内氏」
これらの事業は、工事の進捗状況とともに特設ウェブサイト「昇華-shouka-大内文化」(https://shouka-oouchi.jp/ )で紹介されている。また、12月末からは新たな展示も設置される。問い合わせは、山口市観光交流課(TEL083-934-2810 )へ。
クラウドファンディング第2期
約7億6000万円かかる瑠璃光寺五重塔修復費用のうち、不足する約6000万円は、3期にわたるクラウドファンディング(CF)で募られている。昨年9月2日から11月30日までの第1期では573件・631万6000円が寄せられ、瑠璃光寺への直接寄付や期間中に開催された「特別拝観」の収入を合計すると、約1100万円になった。現在進行中の第2期(11月30日まで)では、目標額2000万円に対して170件・約309万円が寄せられている(9月28日時点)。達成率は15%だ。
寄付・支援は、読売新聞CF「アイデアマーケット」内特設サイト(https://ideamarket.yomiuri.co.jp/projects/rurikoji2023 )から。
寄付に対する返礼品は、御守(檜皮チップ入り)、数珠、手作り阿弥陀如来像坐像(ざぞう)、五重塔への御芳名奉納など8種類がある。受付金額は、3000円から100万円まで。