石州街道の終点、野坂峠付近は青野山火山群に属しており、これが数十万年前に噴火して津和野方面に流れる川を堰き止め、「古徳佐湖」が出現した。その後、長門峡を経由して湖水が萩方面に流れ出るようになると、湖は干上がって広大な徳佐盆地が形成された。つまり、長門峡がなければ石州街道の後半部を占める徳佐盆地は存在しなかったわけで、これを取り上げないわけにはいかない。石州街道沿いの長門峡駅がその入口である。
郷土の画家・高島北海が名付けたと言われる長門峡は、奇岩や滝、深淵等がいくつも続き、それが四季折々の風景の中に映える景勝の地である。しっかりした遊歩道も整備されているので特に春秋の散策をお勧めしたい。
文・イラスト=古谷眞之助