今から70年前の12月、「子どもたちに広く、豊かで、美しい世界に遊んでもらいたい」という思いをこめて「岩波の子どもの本」シリーズの刊行がはじまりました。今回紹介する本はそのうちの一冊で、二つのおはなしが入っています。
「スザンナのお人形」は、強情っぱりのスザンナが、花びんをわってしまったのにあやまらず、それを弁償するために持っているおもちゃを全部競売にかけることになってしまったおはなしです。
自分のおもちゃが次々と人手にわたっても知らん顔。でも、よれよれになるまで持ち歩いていた大好きな人形が競売にかけられることになったとき、スザンナは叫びました。「これは、あたしのジョゼフィンよ!売っちゃいけないの!おとうさん おかあさん、ごめんなさい!」
二つ目の「ビロードうさぎ」は、持ち主の男の子にかわいがられていたぬいぐるみのうさぎが、ある事情から処分されることになったとき、仙女から本当の命を授かるおはなしです。
二話とも、心をかよわす相手がそばにいることの幸せを感じさせる物語です。
岩波書店
文:マージェリイ・ビアンコ
訳:石井 桃子
絵:高野 三三男
ぶどうの木代表 中村 佳恵